何か気の利いたことでも書こうかと思いましたが、三日三晩考えても洒落た言葉のひとつも出てこないので、この素敵な物語を拝読した後の正直な感想だけ書かせていただきます。
読後、(不覚にも涙してしまいましたが)とても幸せな気持ちになりました。
私は自宅の床下収納から探し出した賞味期限の切れたパイン缶を開け、子供のころ大好きだったその懐かしい果物をフォークの先で小さく切って食べ、さらに幸せな気持ちになりました。
ひとつだけ…
人は何故誰かをまもろうとするのだろう、という問いに、
「何故? 理由なんかないですよ。魂のレギュレーションなのですよ」
あかいかわさんはきっとそう答えるでしょう。間違ってたらごめんなさい。
「まもる」をテーマとした『ドラゴンライダー』もお薦めです。
読み終わった後の(いい意味で)ダメージが大きくて、すぐにレビューを書き始めることができませんでした。
人間のヒカリと、単眼のアンドロイド・ヒトミの二人が荒廃した世界を旅していくお話。
物語の最初の方、「がっこう」でヒトミが語る非ユークリッド幾何学が示す空間の歪みのように、荒廃した世界の中で、二人の世界だけが優しくゆったりと流れています。
ゆったりした世界を作りあげている、滔々と流れるような文体が心地よく、読み手は自然体のまま物語に入っていけます。
終盤に至るにつれ物語はドラマチックに展開していくのですが、そこでも文体の優しさを保ち続ける作者様の手腕が見事。
その為か終盤の展開の(二度目ですが、本当にいい意味で)ダメージが大きい。
また、本編では多くは語られませんが、ヒカリとヒトミの名前や、「がっこう」での小話など、考察を深められる要素が多く、かなり作りこまれた作品です。