第6修行 戦いの後

「しかし凄いな…まさか片方の人格まで即座に具現化させるなんて…」

「玲子ちゃんがあの時咄嗟に思い付いたそうなんです。修行していた時と同じ要領で私を出したようで…」

心の世界にいた時、玲子ちゃんに危機が訪れているのを感じ取れた…もしかしたら、玲子ちゃんが私を具現化させるのに成功したのは単に修行をした成果だけではなく、「一緒に戦いたい」という思いもあったからなのかもしれない。

「天閣さん、苧環というあの妖怪について教えてもらえませんか?彼も昔は私と同じように修行をしていたのですよね…?」

「良いだろう。もう隠す必要もない…全てを伝えるよ。」


ー数十年前ー


「苧環、修行はどうしたんだ?」

「師匠…これを続けているだけで本当に強くなるのか?毎日毎日同じことの繰り返しで強くなった気がしねぇんだよ。」

苧環は私の元で修行を積んでいたものの、元々サボり気味な性格で何もせずとも早期に力を手に入れる方法を模索しているようだった。


そんな中、ある事件が起こってしまう…


「苧環…これは一体どういうことなんだ…?」

「どうもこうもない。こういう状況なんだよ。」

私の住む山からほど近い村が何者かに襲撃されたという話を聞き、駆けつけた先で私が見た光景は火の海に囲まれた無残な村の様子であった…

「村を襲撃したのは君なのか…?」

「…………」

「答えろ!!苧環!!」

苧環は何も答えずに私の顔をじっと見つめている。

「師匠、あんたは俺にこう言ったよな。「想像をするんだ」って。」

「そうだ…」



「俺が想像をした「結果」がこれなんだよ。」



「君は…自分が何を言っているか分かっているのか…?何の目的があって村を襲撃した!?何故罪の無い大勢の人々を死に巻き込んだんだ!?」

「試したかったんだよ、こいつの力を。」

そう言うと苧環は背負っている巻物を私に見せた。

「それは…まさか…「幻獣の巻物」!?」

「やっぱ知ってんだな。その通り、こいつは幻獣の巻物だ。この村に代々宝として隠されていて、所持者にとてつもない力を与えるという…」

「そんなことの為に修行の力を使ったというのか!!挙げ句は証拠隠滅のために巻物の力を使って村の人々を一人も残さず焼き払ったと!?」

「力を求めて何が悪いッ!!!」

「…っ!!」

「この世は全て力で成り立っている!何もかもだ!俺はそんなこの世をのしあがって行く為に力が欲しい!それだけだッ!!」

この男は…どこまでも力に…!!

「いずれはお前も必ず殺す。必ずだ…!」

「待て!!苧環!!」

気がつくと苧環は燃え盛る炎の中に消えていた…




「そんなことが…」

「彼はどこまでも力に貪欲だった。誰よりも強い力を求めていたんだ…」

数十年前の話になのについ昨日のことのように感じる…私の前の弟子がそんな酷いことをしていたなんて…

「君達には無関係のことに巻き込んでしまって申し訳ない…これは私と苧環だけのことだったのに…」

「そんな事ないです!確かにいきなり出てきたことにはビックリしちゃいましたけど、天閣さんの修行のおかげで倒せましたし!」

「美子…」

「だから、関係ないなんてありません!」

「そうだね…では、これにて私との修行は終わりだ。」

「も、もう良いんですか…?」

まだ数日しか経ってないのにどうして…?

「君達に教えることは何も無い。あの想像力を見るからに大丈夫だと判断したんだ。君達なら苧環のように力を悪用したりなんてしないからね。」

スタッ…スタッ…

「ちょうどお迎えが来たみたいだ。行っておいで。」

「…分かりました。短期間でしたが、お世話になりました。」

「あぁ、またいつでも来てくれ。その時は私も力になろう。」

私は天閣さんに一礼をした後、私の迎えと山を降りていった。

続く。

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