第5修行 双生

「なんて…ことなの…」

「ヒャーハッハッハッ!!!こんなに気持ちが良いのは生まれて初めてだぜッ!!力が止まることなく溢れ出してくるんだよ!!」

この凄まじい妖気…身の毛がよだつほどの恐ろしい妖気だ…

「早速やらせてもらうぜ…!!」

バリバリバリ…

雷のような音を響かせながら、私に襲い来る。その速さは明らかに私の居合いよりも速い…!

「風獣蹴ッ!!」

ドゴォッ!!バシュンッ!!

「ぐはっ…!!」

蹴りの一撃だけであの威力…次まともに食らったら命の保証は無い…か…

「ゴフッ…」

「オイオイ、この姿になった途端弱くなりやがって。もっと俺を楽しませろよォォォォ!!!」

まずい…攻撃を食らっては…!起きて私の体…!!



『想像の力を極めれば…無から有を作り出すことも出来る!』



そうだ…想像をするんだ…私達は何のために修行を積んできた?今ここで活用しなければどこで使うと言う?想像しろ…この危機を乗り越えるために…!!

「死ねェェェェ!!!」

ドンッ!!

鈍い音が私の耳と山中に響いた…だが、この音は私がやられた音ではない。音の正体は…




「お待たせ、玲子ちゃん…」




「美子!!」

自分でも驚いた…まさか心の世界で一緒に修行していたように、今現実で美子が姿を現して私の危機を救っているのだから。

「(なんと…二重人格である彼女ならではの想像でもう一人の人格を具現化させるとは…)」

「ここからは私も戦うよ。一緒にあの妖怪を倒そう!」

「えぇ、私達でやりましょう。」

「一体どうなってやがる…何で同じ姿の奴がもう一人いやがるんだ!!」

あと一歩で倒せるはずだった私を倒し損ね、さらに美子が現れたことに苧環は動揺している。

「私一人では出来ないことも…二人なら出来る!」

「苧環…今度は「私達」が相手よ!」

「うるせェよ…俺が負けるわけないんだ…俺が最強なんだよ!!」

「なら私達をやってみなさいッ!!」

バッ!!

両者共に動き始める。さっきの攻撃の痛みがまだあるが、隙は美子が補ってくれるようだ。

「水獣拳!!」

バシャバシャッ!!

「ぐっ…!」

美子が水獣を宿した拳による一撃で水圧に押されかけている…だが攻撃力が高い分、脇が甘い。

「蝶月輪…」

「なっ…」

相手は横から迫る私に気付いたようだが時すでに遅し。

「一刃ッ!!」

シュバッ!!

「かはッ……」

一刃の一太刀を食らい、美子への攻撃が止まった。その隙を逃さず美子の攻撃が続いていく。

「月ノ美兎!!」

ジャキンッ!!

「グフッ!!」

かなり良い攻撃が入ってる…このまま決めれば…

「行くよ!玲子ちゃん!」

「うん!最後は…私達で決める!」

「クソがクソがクソがァァァァァ!!!ぶっ殺してやるッ…!!!」

そんな叫びも虚しく、苧環の体はさっきの攻撃で動けない。

「はぁぁぁっ!!」

ジャキジャキジャキ…

二人で交差するように苧環を斬り刻んでいく…

「これでトドメ!!」



「「双生剣舞ッ!!!」」



スッ…チャキン。

「ク……ソ…共…が……」

ブシャァァァァ!!

凄まじい血しぶきをあげて苧環は倒れた。それと同時に、美子の体は私の元へと還元されていく…

「やりましたよ、天閣さん…」

「お見事だ。素晴らしい戦いだったよ。」

天閣さんは戦いで疲弊した私に優しい微笑みを見せてくれた。

続く。

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