おしゃべりな花(華道、少女、明るい)
お題は「習い事」、ふわふわした作品を創作しましょう。
*
わたしが部活で華道を始めたのは、単に花が好きだったからだ。
花が好き。といっても、花の名前に詳しいわけではない。
道端に咲いてる青い花がかわいいなとか、中庭に咲いてるバラがきれいだなとか、プレゼントにもらえばウキウキする。花を嫌いな人などいないでしょ? というレベルの好きだ。
けれど、習い始めてかなりハマってしまった。
種類が同じガーベラでも、一輪一輪まったく表情が違うのだ。
素直にすっと伸びる茎もあれば、胸をエヘンとそらすように見えるものもある。
かすみ草の一枝でさえ、上から見ればふわふわの雲の集まりのようだし、横から見れば降る雪にも見える。
正直、華道という難しいしきたりはわからないけれど、花と会話をしながら個性を見つけてくことが楽しくて仕方ない。
アネモネさん、あなたが一番きれいに見えるのはどのポーズ?
ダリアさん、今日は一段と輝いてるわ!
カラーさん、この立ち姿の方があなたかっこいいわよ!
と、にやにやしながら心の中でおしゃべりをする次第。
*
さて、今日はどんな風に生けようかな♪
花を抱えて渡り廊下を歩いてると、昼間なのに白い三日月が目に入った。
青空をわたる舟のような月影。
あんな花器(花瓶)があったら素敵だろうな。
そしたら、どんなお花を生けようかな?
むふふと笑うわたしの頬を、ふわふわと優しい花の香りが撫でていった。
おわり
【短編集】短編の宝石箱 天城らん @amagi_ran
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