耳が痛い。でも、痛いと思える自分でよかった。

これは、いわゆる【異世界ファンタジー】という、商業的なシステムに組み込まれた、或いは組み込まれる事を望んでいる若き才能への叱責であり、文学、文芸が今後どんどんやせ細っていく事への懸念、そして、それらの軌道修正を真摯に願う、読み書きが大好きな一人の人間の願いでありましょう。

例えば、ものすごくマイナーな工芸のジャンルがあったとして、その作家達は、作家同士のプライドを以って他人の作品を鑑賞し、そこで、「オレもコイツに負けないモノを作り上げるんだ」と発奮する。そして、そんなプライドのぶつかり合い、また、自分たちの価値観の中でのより高みを目指そうという切磋琢磨が、多くの人に知られる事なく、マグマのように地下で滾り、醸成していく。そして、何らかのキッカケで多くの人にそのジャンルが知れ渡るようになった時、「彼らは、なんと素晴らしい世界を作り上げているんだ」と大衆を驚愕させ、感動させる訳です。

「その真逆の事が、今の出版業界で起こっている。それが、異世界ファンタジーライトノベルなのだよ」と、この筆者は思っておられるのだと思います。

もちろん、異世界ファンタジーライトノベルを書いている人同士にも切磋琢磨はあるのでしょう。「でも、それらはぬるすぎてお話にならない。それどころか、上記の工芸の例の逆方向の働きさえある。それは、日本の文学、文芸界の悪貨でしかない」そんな思いに端を発した愛が、この10編にはありました。

私は異世界ファンタジーを書いた事がありませんが、私が「こんな話を考えたんだよ、おもしろいと思わない?」と書き上げた今までの物語の、その稚拙さをしっかりと指摘されましたし、この10編はモノ書きの指南書としてもとても有意義だと思います。

カクヨムユーザー全員に読んで欲しい、なんてことまで思ってしまいました。

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