明確に描かれないまま進行する物語のディティールは、おそらく読者に様々な色彩と空気感を持たせるだろう。
そう、物語に出てくる重要なアイテムである水槽がどんなカタチでどんな大きさなのか、そのディティールが分からないままに読者は物語の骨格を追い、知らされない細部を自分なりに補完しながら読み進める。
読者が持つその違和感と、主人公の寂寥感あるいは諦観が化学反応を起こした頃に、この物語の真実は訪れます。
文字を読むという能動的行為である読書体験だからこそ生まれるこの面白さは、この作品を文学と言わしめます。映像作品では得られないおもしろさが、ここにあります。
一度読んでみてください。
とてもいい作品です。