第5話 日常のワタシ

 「学校で襲われた?」

「放課後に、カメレオンみたいな格好の奴に。..どこかいったけど。」

こいつが言ってた矛みたいな力の連中なんだと思うけど、場所を選ばず襲って来るのやめてほしいよ。


「追い払ったの?」

「..逃げに逃げて、最終的に実験室に居座ったから縛り上げて、やられた分を還してやった。」

「君、ホントに受身の人?」

「知らない。」

普通の高校生の筈なんだけど、周りがそれを認めてくれないんだよなぁ。


「これからも、ああいうの来るの?」

「ん〜まぁ..心しておいた方がいいかもね、一応能力者な訳だし。」

「待ったはったは平和でいいけど、戦いなんて御免だよ。ただでさえクラスで浮いてんのに、静かにさせてよ」

「俺に言われてもな。」

っても何でもない教師に一連見られてるしなぁ..目立ちたくないなぁ。

頼む、頼むから、日常よカムバック!


「あ、それよりっていうか関係はあるんだろうけど知ってるかな?」

「何が」

「今校内で多発している怪事件の事」

「他にもあるのかよ..。」

カメレオン爆破事件よりも上?

身体が持ちません、日常は諦めよう。

「生徒達が忽然と痕跡も残さず姿を消しているらしい。一部では、デスホワイト事件と呼ばれてる。」

「ダサっ、なにそれ」

殆ど修正液じゃん。いつから起きてたんだそんな事件、知らないけど。

「放課後ヒマ?」

「何、調査でもしろっていうの?」

「俺生徒じゃないし、するならそっちしかないよね多分。」

「また放課後コースですか...」

生徒じゃないという割に聞けば良く知っていた。

粗方のやり口を聞けばこうだ。

 一日一人ずつ生徒が消えている。姿を消した生徒には共通した特徴は無く学年や性別もバラバラ、後日クラスの消えた生徒の名簿には斜線が引かれ消失を示唆した教室へと書き替えられる

証拠は一切無く「ここにいた」という痕跡すらも残らないという。


「何か知らない?」

「他に聞く人いなかったのね。」

「うるさい、答えろ」

私だって聞きたかないよ。

だけど都合が良いんだよ、教師ならさ

「以前職員会議で一度だけ議題に上がったけど、直ぐにバカバカしいって取り下げられたわ。他の原因に決まってるってね、マトモな判断よ」

ホントにマトモだよな、アイツら私と廊下ですれ違うと見て見ぬフリするもん、正常も良い所だよ。

「被害に遭ってる箇所とこれから遭うかもしれない場所って教師からみてわからないの、なんとなくさ。」

「教師って言うほど万能じゃないよ」

「..知ってるよ。」「あら。」

バカにしてんのか?

役に立たないのはわかってるよ。

「隣のクラスはもう一人消えているらしいわ。これからの目星はそうね、見境は無いと思うわ。」


「まぁランダムだしねぇ」

「そ、偶々ウチが無事ってだけで充分危険な水準って事。特にオカシな子がいれば尚更よ。」

「...ウチに親がいなくて良かったな。

お前が学校ココから消されてたぞ」

「そこまで権力があったのね?」

「権力じゃない、モラルの話だよ。」

 大人しく言い返さないと何を言っても傷付かない奴と解釈する奴がいる。

こういうのは物や人で脅すか相手にしないのが一番だ。くだらないよな

「放課後、またちょっと学校に残るけど放っといて。あと言わずもがなだけど、能力の事は黙ってて。」


「どうしようかなぁ..。」

「おい、お前教師だろ?

生徒の頼みくらい聞いてよ!」

「口が悪いわね、女の子なのに。

彼氏できないわよ、そんなんじゃね」

「はぁ!?

気持ち悪い事言ってんなって!」

「キャハハ!

やっぱり面白いわね、アナタって。」

あの女は言うだけ言って帰ってく、いつもそうだ。普通なのに変わってる。


私の生活は基本放課後からのスタートになっていた。

「初めの箇所がここ、三階の廊下。

最後に姿を見たのはここだった」

 苦労したぁ..見ず知らずの生徒に当時の事聞いたりしてさ、「その日の彼の様子は如何でした?」とか言って。

キツイってのよ、人見知り舐めんなよ


「被害者は6名、箇所を洗ったところ正式な場所は分からないけどおおよその位置は三階廊下、三階音楽室、二階トイレ、一階多目的室、一階教室、第一体育館、どれもバラバラ。」

共通性は無く疑問も無い、アイツの言ってた通りだけど。

「逆に言えば普通過ぎる」

現象は別にして、仄めかす奴は徐々にヒントを出して答えを滲ませる筈。だけどこれはまるで通り魔のように見境無く手を出しているように見える。

「敢えてそうしている?

それとも意味なく人を消している..」

どちらにせよ愉快犯だよ、最悪。


「手掛かり見つけた?」「んー。」

出たよ、めんどくさいなぁ!

「一つ目の消失場所に着いたけど特に何も、だからついてこないで。」

一人でいる奴にちょっかい出しやがって、奇をてらいたいのか?

教師やってる時点でまぁまぁ普通だからなお前、個性とか無いから別に。

「二階の家庭科室には行ってみた?」

「家庭科室?

あそこは別に関係ないでしょ、人が消えたりしてないんだから。」

「逆よ」 「は、逆?」

「元に戻ってるのよ、部屋が。」

「え..?」

不気味な事を言うもんで向かってみると言った通りで、爆破された筈の部屋が綺麗に修正なおってるの。

「工事ってこんなに早く済むんだ」

「..わかってるでしょ、業者が入った形跡も無い。そもそも〝壊れている〟という事が周りに知られてない」


「そんな事ある?」

「無いから疑問にしてるのよ。」

またおかしな事が起きているけど一つ明確にわかるのは、これを行った奴は私の〝味方〟だ。それは間違い無い。

「有難う、素直にお礼を言う事だったわ。癪だけど」

「そ、それはよかった。」

今日は一旦帰ろう

明確に嫌な奴に会う理由が出来た。


GIBER本拠地203号号

「フルハウス。」「くそっ!」

「舌打つ程の決め手じゃないでしょ、ロイステでもあるまいし。」

「ロイステ?」

「ロイヤルストレートフラッシュ。」

ギバーの活動

情報収集、他ポーカーオセロトランプ


「おじゃまっ!」

「うお。」「あれ、どした?」

ドア硬てぇ..っ!

扉まで高いのかこのマンションは。

「ひょろ長、聞きたい事がある」

「ひょろ..君日に日に口悪くなってる気をつけた方がいいよホント。」

「そんな事どうだっていい!」

「うわぁ〜...偉いヒステリ。」

喉痛いわこっちだって、慣れてねぇ。

「で何?」

「一つしかないでしょ、学校の事だよ

爆破された部屋が治ってた。それも綺っぱり元に戻したように、誰の仕業かわかってるよね教えてよ。」

「ん、あー...動き出したかあの人。

一度声掛けてっていったんだけどな」


「やっぱり知り合いかよ」

「まぁね、名前はスチュアート。俺らと同じ受身の能力者、って言ってもまぁ彼のソレは少し特殊だけどね。」

「スチュアート?」「そう。」

詳しく聞けば流れの協力者らしくいつも前触れ無く手を貸すらしい。

「でもそうか、彼がいるなら安心だねフラフラしてても問題は解決すると思うよ。ポーカーやる?」

「やらねぇ!」

この扉の硬さに腕が慣れるのも時間の問題だろうなこりゃ。

「なんだか、付き合い悪いねぇ..」

「友達みたいに接するからよ。」

「馴れ馴れしさは疎遠を生む要因だ」

「まぁいいや、上手くいってるしね」

現に俺達に頼りきってるしなぁ。


明くる日、放課後..。

 「いつ帰れんのよ、友達もロクにいないのに居残りなんて嫌だわホント」

「やっと出来た子は爆弾魔だしね」


「お前は何でついてくるのよ?」

「アハ!」「うぜぇ..」

 とにかく犯人探して平穏を取り戻そう。学校や家が平和なら取り敢えず心は落ち着ける。

「ってなると先ず見つけ出すのは犯人よりも共同者。流れの助っ人だわ」

まったく手間が増える一方だ

人を探して校内を駆け回り疲弊する。手掛かりも何も無い状況でよ?

「二手に別れよ、効率良いし。」

「でもお前普通の...まぁいいか、別にそうしよ、一人の方が楽でいいし。」

さっさと便利屋探して後を追おうっと


校内二階多目的室

 「デシシシ、多目的..多目的だとさ

得られる〝ヒント〟が多ソウダァ..」

小男は囁く、人知れず、ひっそりと。


「なーんてっ!!

そんなワケねぇよなぁ〜!!

なーんもネェもんここハッハハ〜!」

物が無くとも楽しめる。

生き残るのはこんな輩ばかりだ。


「何か手掛かりは無いか!」

 湧いて出る頭も無いし、結局情報頼り手元の資料は使い尽くしたから後は記憶や過去の出来事。

「....あ、あるじゃんか」

家庭科室の破壊が修正ってる。壊れたところが治るのか。

「なら新しく壊してみよっか」


『反発』活用講座〜!

まず握りのいい適度な硬さのボール又は石ころを用意します。

それを正面の壁に思いきり、自分に跳ね返ってくるように投げましょう。

反発の加わったボールは自分に当たる事無くもう一度壁目掛けて飛んでいく

「ここでポイント!

反発したボールの威力は初めに投げた時よりも高く設定しよう。でないともう一回返ってきて、壁と身体の往復無限ループが始まっちゃうぞ!」

……何やってんだ、私。

「まぁいいや、穴空いて壊れたし」

暫く影から見張って壁を観察しよう。

「それで現れたのがスチュアートだ」


「シスモス〜」

『もしもしって言ってくれない?

わかんないのよ慣れたくもないしさ』

「硬い事言うなよ、お前んチの扉か!

んな事よりどうよ例の女!」


『もう来てると思うよ。』

「えウソ、もういんの!?

気付かなかったぜぇ〜!バハァ〜!」

『ばはぁ〜じゃないよ別にいいけど』

「じゃボチボチ探すわ!

ばいちゃバイちゃバイチャチャ〜!」

『しんど...。』


二階教室

「他所の教室初めて来た。」

ていうか何で鍵開いてんの?

いるよなー、閉めてかないルーズな奴

「...調べてみるか」

教室っていうのは便利だな、一部屋ずつ電気が付いてる。灯しさえすれば全部丸わかりなんだから。

「変哲は余り無いなぁ..机の中でも調べてみるか?」

嫌だなぁ下らんラブレターとか出てきたら、電子の時代に。

「先ず確認するなら名簿か」

被害者の名前には斜線が引かれているらしいからな〝削除済み〟って事か。

「被害者は...いないみたい。」

なんだよ手掛かり無しじゃん

..不謹慎だけど。

「取り敢えず何か壊しとくか、痕跡があればもう一人が寄ってくる。」

何かあるかなぁ..うん


「ロッカーとかでいいか。」

替えがききそうだしなロッカーなら。

「よっ!」

軽く素手でいけたわ。

イキッた運動部がガチャガチャやったのかね、イキッてんなぁ運動部。

「ん?」

何これ。ロッカーの中に上着が..

「胸ポケットに手帳が入ってる。」

黄鎖高校一年 猿渡英二さわたりえいじ

「この名前、確か..!」

やっぱりだメモに書いてある。

三人目の被害者の名前、猿渡英二!!

「何でこんなところに上着を?」


「ヤボ用みたいだな。」

「誰だよ!?」

「オット、驚かせちまったみたいで」

壊れたロッカーの扉が真っ直ぐ伸びてくっ付いてる、コイツもしかして...。

「あなたが..スチュアート?」

「ご名答!

って事はオマエが例の女な訳だな。」

コイツ、嫌な感じがする!

「そう身構えんなよ、なぁ?

オレっちはお前の同類だぜ理解しろ」

「受け身の能力者。」「そうだ」

随分と成り下がったものだ

普通の女子高生の筈だったのに。


「日常よ、カムバック..!」


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