第2話 私のハナシ

 「へぇ、珍しいねぇ..生まれつきの能力保持者か。」

「...そんなんでわかるの?」

「パワーリーダー。

能力を測る測定器だよ、翳して透かして見ることで情報が読み取れる」

 赤っぽい水晶みたいな球を眺めると楽しいらしい、やっぱりこいつ変わったやつだ。仲良くはしたくないけど。


「へぇ..君は〝反発〟か、見かけによらず反抗的だね。」

「....そこに何か書いてあるの?」

 疑問を投げ掛けると男は見ている球の表面を見せてきた。そこには私の情報が、私自身も、知らない個人情報が書かれていた。

「ここの上のトコが能力名。下が効力その下が覚醒時期だけど、君の場合は生年月日が書かれているね。」


2003年4月12日..そうか、道理で嫌だったんだ。毎回生まれた日を見ると吐き気を催す、最悪だ。


「で、私に何の用だよ」

「うおっ..いきなり敵視!?

怖いなぁ、反抗期みたいでさぁ。」

ムカつくやつだ。

変わり者の癖に煽ってくる、自分だって似たようなもんなのに!

「用が無いなら帰るよ?

知らない人だし、面倒だからさ」


「つれないなぁ..用ならあるよ」

「なんだよ、それ...?」

コイツ..おかしいどころかイカレてた身近で待ってたのは初めてだ。

 黒光りする固い鉄、日本って持ってていいんだっけ?

「何するつもりだよ。」

「決まってるでしょ、銃持ってやる事なんて。言わずもがなだよ!?」


「くそったれ...!」

 能力ちからを面白がって、危害を加える奴も偶にいた。多少小突かれる程度だから大した仕返しにならないんだけど、結果的にいつも暴力を振るったのはこっち側になる。

「私は傷が付かないからね」

だけど銃弾はやった事ない。

やり方なんて考えた事ないけど、一つだけいつも決めてる事がある。


「やられた分は、倍にして返す。」

叩かれれば痛みの倍、数を撃たれれば単純に個数の倍。直接受けた事はないから目分量だけど、それは仕方ない。

「私の痛みを知れ」

「へぇ、数まで増やせるんだ...。」

「用は済んだ?」

「これは、避けられないね。」


その後は悲惨なもんだ。

何年か前のトラック思い出した、あ〜気分悪い。見たくないよな、身体中に銃弾の食い込んだ変人なんてさ。

「帰ろ..。」


「痛った...」「!?」

なんで話してる、息が出来てるの?

「結構刺さってるね。

加減して撃てば良かったかも」

「……。」

「あ、ごめん俺〝死なない〟んだよね流石に痛みは受けるけど」

 食い込んだ弾が、音を立てて床に落ちる。いや、外して落としてる?

「..気持ち悪っ。」

変わり者を白い目で見て避ける気持ちがなんかわかった。

「だからっって同じじゃねぇ一緒にするな、私とお前をっ!」


「いいや、一緒だよ?

能力が違うだけ。君は反発、俺の能力

は〝順応〟衝撃を受け入れ抑え込む、確かに仲良くはなれないかもね。」

「...ちっ」

 痛みを跳ね返すのとはまるで逆、私と違って〝誰よりも痛みを知ってる〟って訳か、くだらない。

「耐え切れないで倒れちゃえ!」

「だから死なないんだって..。」

間違えた、コイツ変わった奴でもイカレた奴でもない、嫌な奴だ。

「くそ野郎!」

「君、さっきから口悪いよ?」

悪くさせてるのはどっちだよ!

要件は言わずじまいだし、嫌だ、もう付き合いきれないっ!

「帰る」「..待ちなよ。」

だったら要件を言えよ、いつまでも優しいネクラ女子じゃないぞ?


「君を勧誘する。」

「...はぁ?」

なんだよ、勿体ぶって結局宗教かよ。そりゃあ話が通じん訳だ。

「生憎信じるものは何もないんで」

「違うよ、我が組織にさ。」

「組織?

結局宗教でしょ、やめてよそんなの」

「違う、そうだな..。

謂わば軍隊ってところかな?」


「もっとだ、帰れ!」

「話は最後まで聞きなよ。

僕たちは今酷く侵食されている」

「僕...〝たち〟?」

「そう、僕たち能力者。」

故意に複数の存在を知らしめる辺り、大人の卑しさを垣間見る。

「断っても逃げ場は無いってか..」

「そんな身構えないでよ、能力者っていっても皆んな受身の人達だし。」


「……。」「ね、じゃあ付いてきて」

やっぱり私、こいつ嫌いだ。

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