第7話 空白と私

 何も無い。死んだ?私死んだ?

思ったより退屈だなぁ〜天国って。

「オイ」「..何。」「オイ」「何よ」


「オイ!」「何なのよ⁉︎」

静かにしてよ私死んだんだから、耳に障るなアイツの声。

「起きろ、目ぇ覚ませ」「あん?」

死後の世界をよく見とけって事ね、普通に言いなよそんな事。

「..うっわ、白」「消された世界だ」

「消された世界?」

そう呼ぼうって決めたんだ、強要かなそう呼称しろって強めのアレかな?


「デストロヴェールに堕ちたのね..」

「...何ソレ、そう呼ぶって決めたの?

強要?そう呼べって強めの?」

私達の他にも結構人がいるわね。

これも皆んな死んでいった人かしら?

「早くここから抜けださネェとな。

出口を探すぞ、んでアイツの顔を殴る

立ち上がれ女!」


出口がある訳?

ん、待てよアイツの顔..。

「そうか、私たち消されたんだ!」

「やっと気付いたのかよ」

「直ぐに抜け出しましょう。

このデストロヴェールから!」

「そこは頑なだな..。」

白き世界の出口は何色?

「先ずは手掛かり探しよ。」

「アッチとやってる事一緒だな」

メモはポケットに入ってる、それならリストに名前のある人も周りにいる筈

「話を聞いてまわろう。」


「出してー!」「...何?」

「出して、ここから出してー!」

「よく見ろアイツら、服を着てねぇ。

身体が真っ白で、まるで理性が無い」

名前確認のしようも無い。

あれじゃまるで烏合の衆だ、それに..

「多分あそこにはメモの人はいない」


「アナタたち、出口を知ってる!?」

「ハァ?」「出してくれよ、なぁ!」

考える事をやめ、嘆く者たち。

ここがどんな場所か何となくわかった

「早く出よう、思考を保って。」

「オイ、出口がわかんのかよ?」

わかる訳ない。

だけど歩き続けないと、止まればここから出られなくなる。

「ねぇスチュアート、担任の能力ってどんな力だと思う?」

「えーと...掴んだ者を消滅す。

オレっち達はそうされたよな?」

「うん、確かに。でも違う

アイツの能力ちからは、人を空間に閉じ込めて情報を搾取する。」


「アァ⁉︎」

「私たちがあそこでみたのは確かに学校の生徒だけど、メモにあるこの名前はデタラメ。直前までの僅かな痕跡も別人のコーティング..。」

「でも事件はマジで起きてんだろ?」

「ええ、大マジもいいとこ。」

派手好きの過剰な女、嫌いです!

「被害者はそれよりも前に既に消されて、情報を抜き取られてたのよ。」

その末路があの白い集団か..。


「痛っ..!

おかしいぞ、皮膚の表面がピリつく」

「侵食が始まっている。」

「お前は何でヘーキなんだよ?」

「私は体質上衝撃を受けない。分けてあげるよ、腕出して」

「ネクタイ?

そんなもんで腕縛ってドウすんだ?」

「人と触れてる間はソイツにも同じ効果が及ぶ。これで取り敢えず大丈夫」

「..やるじゃあネェか。」

 やる事は二つ、出口を見つけだす事と上手く抜け出す事。だけど多分出口を直接作り出すような丁寧なマネはあの女はしてない。となると無理矢理抜けだして元に還るしかない。

「スチュアートの力で帰れない?」

「...アッチにいたときに戻す事は可能だが、過去に触れている必要がある。何でもいい、物でも服でも」


「なら私に触れてる!」「無理だ。」

確かに触れテルが、身体がマンマこっちに来ちまった。

それは実質〝触れてない〟事になる。

「アッチに物が残ってればな...」

ロッカーの学ラン、あれは無理だ。

私は触ったけどスチュアートが触れてない。メモでも置いていけば良かった

「ケッ、不便だナァ!

こういうとき通信でもデキル能力があったりスリャアよぉっ!」

「そんな能力どっちにも...。」

待てよ、通信?

「....ない、やっぱりだ。」

「ドシタ?」「スマホだよ、スマホ」

 消されるときに学校あっちに落としたんだ。

「デカしたぞオンナー!」

「ヘマしたんだよ、運良く上手いこといったみたいだけど。」

「待ってろ、スグに修復なおす」

「..それどんくらいかかる?」

「まぁまぁカカルが、直ぐ終わる。

少し辛抱シテロ。」


「なら後にした方が良いかも。」

「何でだ....ヨォ!?」

そうか、だよね。

人から情報を吸い出せるなら〝逆〟も出来るに決まってる。

「シロい人間が一つになって!

デッケェ化けモンになりやがった!」

「修復を続けて。

一人で逃げたりしないでよ!」

「わっ、バカお前ぇ!」

体質的にダメージは受けない。

ただのパンチやキックなら、全然平気


『ルオ..』「え?」

振り下ろす拳、ただのパンチじゃない

あの光、もしかして..!

「爆発するかも。」「離れろ!」

馬鹿言わないで、私が離れたらこの空間もスチュアートも粉々よ!

「受け止めるしかないじゃない..。」

「ヨセってんな事スリャあいくらお前の身体だってヤベェだろ!?」

「これでも被害は最小限だよ。」

それに甘い、私のカラダは壊れないよ

「でも確かに流石にキツそうだ」


『ブアァ..!』「くっ!」

重たっ、しかもずっと爆発し続けてる

「一度に返すのは無理そうだ、なら」

「...ん?

なんだあれ、爆発が逆流してやがる」

最後まで衝撃が伝わるまでに、受けた分を返し続ける。これなら..!

「最初グーの後が勝負よ。」

あいこかパーか、やってやろうじゃん


『ア、アアァァ...!』

「と思ったけどごめん、やっぱムリ」

縦から受ける拳と爆破の衝撃を、身体を支える足に流して飛ばす。

「情報で構造を破壊する、どう?」

柱が崩れれば家だって脆いものよ。

「離れろオンナ!」「え?」

身体全体が光ってる。

「...もしかして、爆破の情報を身体そのものに移し替えた?」

それって自爆じゃんっ!!

「スチュアート!」

「くっ、余計な事スンなよなぁっ!」


校内廊下

「..そろそろかしら?」


「ばはあっ..!」「あら。」

あった携帯、ってあれ..?

前の位置からあんまり変わってない」

「ナンデモいいんだよ!

とにかくかえって来たんダゼ!!」

「お帰り、早かったわね。」

嫌に冷静だ。

その理由は大概わかってたけど

「知ってて放っておいたでしょ?

スマホ壊せば閉じ込められたのにさ」

「何の事かしら?」

「目的は何、ただの教師ではなさそうだし変人ってレベルじゃない。」

「失礼ね、私はタダの教師よ?」

「ウソつくんジャねぇ〜!」

 でも一つ気にかかる事はある。情報を吸い出して部屋に閉じ込めるっていうのは確かに厄介な力だけど、戦闘向きでは無い。

「かといって受け身でも無い。」

「だから言ったでしょ?

私は別に関係無いって、個人的に貴方に近付いているの。攻めず守らずね」


「オレっちと同じナガレのもんか!」

「違うわ。」「ナニー!?」

「...わからない。」

疑問はあるけど多分、この女は学科に残るだろう。平気で生徒に手を掛けておいて、明日からも笑顔で登校する事だろう。しかもウチの教室に。


「私、帰るよ。」「あ、オイ!」

疲れちゃったよ、何か。

家帰って少し寝よう、そうしよう。


「八千草さん!」「....何?」

「気をつけて帰ってね!」

「...あぁ。」

やっぱりこの女、イカれてるわ。

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