第6話 頼むよ私!

 「オレっちの能力は回復リカバリー、あらゆるものを修復保存して上手いことやりとりできちまう!」

「聞いてもないのにどうも。」

「おう!礼にはおよばネェ!

ついでに詳しく教えてやんよ、回復といっても傷を癒す訳じゃなく過去の記憶を引っ張って今を作り替えてる。つまりこのロッカーのフタは前と違って〝壊れてない扉〟に変わってる」


「ソシャゲのチュートリアルみたいね

リセマラはやめとく、面倒だし。」

 言えば未来の概念を変化させる能力か、『壊れた結果の世界』をいじって

『何も無かった過程』に。

「確かに特殊な能力だよね〜。」

「限界はあるけどな、万能じゃねぇ」

「さて、次を探そっと。」

「オイオイ無視なのかオンナー!」

無視じゃない。

初めから相手にしてないんだよ。


「さっさといくよー。」

「あの事件の真相ってやつか?

その前にお前にこれを預けとくぜ」

「..何?」「受け取れ!」「痛っ。」

投げないでよ。

...これ何、スマホじゃん。

「私持ってるよ?」

「それじゃ履歴がバレる。

そっちは掛かってくる用のやつだ、オマエは出るだけ。履歴は残らない。」

「へぇ〜」

信用してないなら関係性持つなよ..!

そもそも番号教えてないのにずっと掛かってきてたんだけど。

「私の個人情報はどうなってんの..」


「まぁ硬ぇ事言うなって、な!」

「硬い事って、勝手に私の情報が..」

このとき気が付けば良かった

いや、気付いた頃にはもう遅いのだ。

「...どした?」「後ろ..!」

ほくそ笑んでる奴は常に近くに、通常のフリをして顔を歪ませていた。

「貴方も消えなさい」

「は?」 「離れろスチュアート!」

まさか、まさかお前が。

「あらら消えちゃった、また友達いなくなっちゃったわね。マナミさん?」

「なんで黙ってた、担任教師!」

ずっと知ってて一緒にいたんだ。真相も場所もわかっててずっと。

「黙ってなんかいないでしょ?

何度もヒントをあげたと思うけど。」

「..ロッカーの学ラン。」

「それだけじゃないわ

消えた者リストを渡したのは誰?

事件について詳しく教えたのは?」

ヒョロ長に事件を聞かされてから、詳しく内容を教えたのは確かにアイツだ

リストのメモを書いたのも。


「目的は何?」「目的?」

「アンタも私を狙ってんだろ。」

「ええ、狙ってるわ。だけど間違い。

〝アンタも〟でなく、私のみよ」

「...なんだよそれ。」

からかってるのか、動揺誘いか?

「そのままの意味よ。私は計画なんてどうでもいい、あくまで個人的にアナタに興味があるの。」

女の話は聞く耳を持たない、というよりは掴み所を作らずスルーさせているように感じる。

「計画って何だよ、私に興味?」

「質問が多いわね。..めんどくさいわ

アナタも消えてくれるかしら。」


「なっ..!」「さよなら。」

さっき見ていた、この掌に掴まれると消えて無くなる。

離れなきゃ...でも何で?

「身体が、動かない。」

「私が興味あるアナタなら、直ぐに戻って来るわよね。愉しみにしてる」

興味あるなら、まず消すなよ..。

「触るな、離れろよ!」

動け、動け動け動け動け..動け!

何で..私の身体、抵抗してよ現実に!


「じゃね〜。」「あ!」

その日私は、日常の世界線から消えた

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