私の隣⁉︎

 『キーンコーンカーンコーン..』

嫌な音だ、絶望の始まる音。

教師達がこれでもかって程力を誇示する一日が始まるみたいだわ。


「みんなお早う!」

「朝からあの女の顔見るのかよ..。」

ていうか何で普通にあそこ立てんのさ

「どうした八千草さん

そんな顔して具合悪いの?」

「……。」「無視?」

わかってんなら放っておいてよ、メンド臭い。私のまわりこんなのばっか?

「はぁ..」

担任の他に嫌いな奴がもう一人いる。

基本人なんか好きじゃないけどそういう意味じゃなく性質が嫌な奴。

「……」

「何、やっぱり具合悪いの?」

 日暮良輔ひぐらしりょうすけ、私の隣の席にいる男。用も無いのに声を掛けてくる、何故かモテるらしいけど何がいいんだこんな奴。

「今日もいい天気だ、しかしこの陽の光が君をそうさせているのならけして良い天気だとは言えないね、窓を閉めて上げよう。この、僕がね。」

うぜぇ..。

一度でも自分のせいだと思わないのか

「以上、今日も頑張って!」

そして何も話を聞かずホームルームは終わりなんだ、「今日も頑張って!」って。でその後の極め付けが...。


「日暮くん、これ受け取って下さい」

これだ。

「何、お手紙かい?

楽しみだぁ、何がかいてあるんだろ」

わかってるだろオイ。

『好きです』的なアレだろ絶対。

「またもらっちゃった♪」

知らん、帰れ今すぐ帰れ

「..ったく。」

なんでこういうのは反発しないんだよ

全然攻められてますけど?


〜放課後〜

 「今日は真っ直ぐ帰れそうだわ..」

正直、イジメって程意地悪じゃないから無視して放っとけば下校まで保つんだよね。慣れただけだけど。

「夕日、久しぶりに見たな...」

綺麗..とかふざけた事は言わないけど別に言うほど見たい訳じゃないし。

➖➖➖

「良かった、ちゃんと呼んでくれてたんだ。呼び出してごめん、待った?」


「いいや、待ってないよ?

こちらこそごめん。少し待っていれば良かったよね、君の事」

「え?」

「だってなんだか急かしてるようじゃないか、愛の告白を、さ。」

「そんな..もう!」

「君が欲しいよ、猛烈に。」「え?」

「受け取ってくれるかい、僕の愛」

「是非!

て、ていうか告白したのは私だし...」


「なら貰うよ?

ま、欲しいのは器だけなんだけど♪」

「え、あっ..!......。」

「ふうっ。」

器は型に、型は形に、形は...。

「やぁ調子どう?

しっかりと〝僕〟の筈だけど。」


「………♪」「...上出来。」

➖➖➖➖➖➖

 翌朝・職員室

「人がまた消えた?

それをわざわざ言う為に呼び出したの

ドチャクソの変態だなアンタ!」

「違う、話をちゃんと聞きなさいよ。あと口悪すぎよ、本当に」

意図して言ってんだよ、自覚あんの!

..だからヤバいのか。


「違うってどういう事さ?」

「私じゃないって意味よ、貴方にバレてから一人も情報を吸い出して無い。

学校の人達からはね」

「別に良い人って事にはならないよ」

「気にしな〜い」

嫌な奴、子どもかよ。

「きえたのってウチのクラスだよね」

「そう、女子生徒の久藤さん。」

「久藤...」「心当たりある?」

確か、アイツに手紙渡してたやつ。

「日暮に告白してた」

「..あのモテる子ね。

最後の授業が終わる頃にはまだいたから、消えたとすれば放課後ね」

授業は全部受けてた、で告白といえば


「放課後だ。」「学生はベタね」

って事はもしかしてさぁ...。

「また居残りかよ」「頑張って」

 簡素なやりとり、これが唯一の校内のコミュニケーションだと思うとゾッとするわ、しかも凄く嫌いな奴と。


ー何度目の放課後だろうかー

「なんで俺まで一緒なのさ?」

「しんどいからだよ、一人で周るの」

「二人のほうが疲れると思うけど。」

「..うるさい」

 どうせ変な奴なら知ってる変人の方がいいよ。何かあってもコイツなら盾にできそうな感じするし。

「そういえば、まぁどうでもいいけど

名前聞いて無かった気がする」

「俺の名前?

言ってなかったっけ、そっか。」

雰囲気が中2臭いし名前もそんなものだろうけど、漢字二文字でとか。


牙島芿山きばしまじょうざん

「……」

ヤンキーマンガかよ。

「え何、元組のヘッドとかそういう」

「テニス部のエース。」

「さわやか!」

「まぁ三ヶ月でやめたけど、部員が弱すぎて退屈でさ。」

「退部理由はヤンキーっぽいなぁ。

初恋の人の名前は?」

「森宮 瑠璃香もりみやるりか

「さわやか!

イケメンしか付き合えない名前..!」

「でも万引きして捕まっちゃってね、あの日夕陽の映えた坂を泣きながらバイクで流してたっけ、可愛かったな」


「エピソードヤンキーだなぁ。

やっぱなんか端々にヤンキーがいるんだよないつも、どっちが強いんだろ」

 さわやか上位とヤンキー上位で顎クイとか壁ドンの意味合いまるで変わってくるからなぁ。

「悩みが一つ増えたかも」

「今更増えて困る事あるの?」

ヤンキー上位で顔ビンしてやろうか。

「消えたのは君のクラスの子だっけ」

「そう、放課後に。」

「また放課後?

そればっかじゃん、いい加減パターン飽きてきてるよ多分。」

「私に言うな!」

真っ直ぐ家帰りたいよそりゃ、でも起きるんですもの問題が。

「心当たりとかないの?」

「一つある」


「あれ、どうしたの八千草さん。

こんな時間に居残りですか?」

「で、その心当たりって何」

「...あいつだよ。」

ていうか多分、確信犯だけど。

「まだ、調子悪いんですか?」

「丁度いいや、なら彼にも協力して貰おうよ。人多いと楽らしいし」

「そういう心当たりじゃ..」

ダメだ、わかった上で言ってるもん多分コイツ。

「僕に協力?

出来る事ならなんでもするけど、一体何をしようか。何がお望みかな。」


「一緒に言ってほしいことがあるの!」


「なんだい?」


「いーい?

いくよ、せーの!」


この話、ここで終わりっ!

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