2話

優斗は朝日と目覚まし時計に起こされた。今日から2学期が始まる。

「んんんんっん。はあああ」

体を大きく伸ばす。

膝にのっけていたアイス枕はいつの間にか顔の横に来ていた。

「なんでこんなところにあるんだよ」

アイス枕を抱えて立ち上がろうとすると膝に声にならないくらいのほどの激痛が走った。ひざを見ると真っ青になっていた。

「うぉっ、真っ青じゃん。ま、いっか」

部屋から出て1階に降りて、夏休み中のワークブック、日記、自由研究を鞄の中に入れて、服を着替え、朝ご飯を取り、歯を磨き、学校へと向かった。

優斗が学校に着いて教室に入ると教室はある話で持ち切りだった。

それは夏休みの楽しかった思い出とは程遠いものである。

「あの董志が襲われたってマジかよ」「ヤバ過ぎだろ」

「噂じゃあ董志に喧嘩を売って返り討ちにされた中学生が闇討ちしたらしいぜ」

そう、それは董志が夜に襲われた、というものだった。

そのことはあちらこちらで様々な憶測がくっついて話されていた。

「なあ」

自分の席に着いた優斗に話しかけてきたのは信輔だった。

「あれってさ…」

「そうかも、、しれないな」

チャイムの音が鳴り、席に座り始める。

そこから体育間に移動をし、始業式が始まったが何も耳にはいってこなかった。

始業式が終わり、教室に戻ると担任が夏休みの宿題を集め、連絡事項の話になった。2学期はどうのこうのとまったくもって面白くもない話だ。その後に続いて董志の話になった。保護者への注意喚起のプリントが配られた。

そこに書かれていたものと先生の言ったことを要約をすると「不審者が出るらしいから気をつけろ」とのことだった。それ以上でもそれ以下でもない。ただそれだった。

帰りの会も終わり下校となった。担任が今日配ったプリントを董志へ届けるのには信輔が自ら名乗り出た。

「優斗、今日一緒に董志の家に行こうぜ」

信輔が後ろに長華と芽菜を引き連れて来た。

「分かったよ」

軽くなったランドセルを背負って学校を出た。

董志の家は学校から近く徒歩3分もかからないほど近い。

3人で歩いているとすぐについた。

家は2回建ての木造建築だ。

インターホンを鳴らすといつもの聞き覚えのある声が中から聞こえてきた。

ガラガラっと横開きの扉が開くとよく知っている顔が出てきた。

「おー、よく来たな。まあ上がれや」

扉を全開にして中に入っていった。それに続いて優斗たちも「お邪魔します」と言って中に入っていく。階段を上り董志の部屋に入りテーブルを囲んで座る。

「これ今日のプリント」

信輔が差し出した。

「お、サンキュー」

「なんで董志君がいるの?」

長華が聞くと董志は胸を張って言い出した。

「医者が言うには『なんともないですね。怪我と言ってもかすり傷程度ですし、気絶したのも疲れすぎでしょうね。まあ大事をとって1日は学校を休んでくださいね』って言われてよ。もう退院したんだよ。傑作だろ!だっはっはっはっは」

それにつられるようにほかの4人も笑い出す。

「それで誰に襲われたんだ?」

「それがわかりゃ苦労しないぜ。わかったらそいつをギッタンギッタンのめっちょめちょにしてやる!」

と、腕を大きく動かして見せた。

「そうだな。やってやろう」

「もうそろそろ帰らなくちゃ」

部屋にあった壁掛け時計を見て長華が言った。

「そうね。私たちまだお昼ご飯も食べてないし」

「じゃあ帰るか」

立ち上がって董志の部屋を出て、階段を下り、玄関まで行き

靴を履いて外に出る。

「じゃあーな。明日は学校来いよ」

「おう。分かってるって」

そう言って、手を振って董志の家を後にした。


「遅くなっちゃった。早く帰らなくっちゃ」

習い事が長引いてしまい外はすっかり暗くなっている。夜の道を長華が歩いている。その後ろを足音を鳴らしながら一人付いてくる。

そのことに長華も気づき歩調を速くする。それに合わせろように後ろの男も歩調を速くする。そこからどんどん早くなり半ば走っているようになった時、長華が文句を言おうと思い振り返った。

その時だった。

男は手に持っていた鉄パイプで長華の頭を殴った。

その場に長華は倒れた。

その後、たまたま歩いていた人が救急車を呼び、応急処置を精一杯したが時すでに遅し、もう二度と息を吹き返すことはなかった。


朝が来て、優斗は目が覚める。両腕がやけに重たく感じる。

体を大きく伸ばしてから、ベットを降りる。服を着替えて学校の用意をする。

今日から本格的に授業が始まる。

朝の荷支度にじたくを済ませ学校へと向かう。

その途中の道では多くの人たちが集まっていた。

何故か嫌な予感がした。しかし人とは好奇心には逆らえない。優斗はそこに興味本位で近づいた。人の群れをかき分け、1番前に行った。そこにはしっかりと張っているトラバリケードとその先に多くの警察官がいた。

何か事件があったのだろう。

それで済まそうとしたがそれはできなかった。隣にいた人たちが話しているのを聞いてしまったからだ。

「まだ小学生なのにね」「災難な子だ」

     「平川さんの子よね」「いい子だったのに」

それを聞いた優斗は走って学校に向かう。

校門を駆け抜け、高速で上靴を履き替えて階段を駆け上がり、教室の扉を開ける。

教室にはどんよりと重たい空気が流れている。

教室には何故か人の円ができていた。その真ん中には芽菜が肩で息をしている。近くには董志と信輔がいる。ゆっくりと3人のところに行く。3人の前には芽菜の机が置かれている。ただ天板に『次はお前だ』とで書かれていた。

段々と芽菜の息のスピードが速くなっていく。

「・・だ・・だ・やだ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」

声を荒げながら教室を出て行ってしまった。芽菜はそのまま階段を上り、壊れている屋上への扉を開けた。転落防止の為のフェンスをよじ登り、そこから飛び降りた。

投身自殺だ。頭から真っ逆さまに落ちている。優斗は途中芽菜と目があった。目には晴れ晴れとしたものになっている。そして顔に笑みすら浮かんでいる。

たくさんの人の悲鳴が聞こえる。先生はもちろん生徒のものもだ。

地面が近づいていくにつれて時の流れがゆっくりに感じる。

その時芽菜は『これで呪いから解放される』そう感じた。

頭はトマトのように簡単に潰れた。首もつぶれ、体は生きていれば絶対にならないであろう格好になっている。

頭の中身は至る所に飛び散っている。それは近くにいた生徒の服にもかかっている。

その生徒や近くにいる人たちは口から朝食を書き散らしている。

正に地獄絵図だ。

しばらくして、警察や救急車が学校にたくさん来た。

警察は死体が見えないよう周囲をブルーシートで囲った。

救急車からは救急救命士が降りてきて気絶した人たちを救急車に運んでいた。

担任が教室に入ってきた。

形式的なものを済ませ本題へと入った。

「昨日、クラスメイトの平川長華さんが亡くなりました。そしてさっき岡部芽菜さんも亡くなった。みんな黙想」

全員が静かに目を閉じた。1分すると担任の指示で目を開いた。

そして2枚のプリントが配られた。

1枚目のプリントには昨日のような注意喚起のものでなく禁止するようなものだった。

2枚目には今日から3日休校にするというものだった。

「2枚目のプリントに書いてある通り今日はもう帰ることになりました。なのでこれが終わったら鞄を持って帰るように」

本当ならもう帰れるということだから喜ぶのだろうが、理由が理由なだけにクラスメイト一同全然喜べない。

さようならの挨拶をしてみんな鞄を持ってのっそのっそと教室を出ていく。

「なあ優斗」

後ろから董志が話しかけてきた。その後ろには信輔もいる。

「なんだ董志。今日は遊ぶ気分になれないぞ」

「友達があんなことになってて遊ぶわけねえだろ」

それから少し間が開いて

「俺たちで犯人を捕まえねえか」

「俺たちでできるわけねえだろ。第一どうやって次の・・・ターゲットを・・・」

「気づいたか。俺を含め襲われた、襲われかけた奴はみんな学校の怪談を試してる」

「だから、僕たちが犯人をおびき出して退治しようってこと」

「分かった。やろう。この元凶は俺たちだ。だから俺たちがやらなくっちゃ」

3人で腕を突き出して決意しあった。


決行は今夜の20:00になった。『各自何か武器を持ってくること』だそうだ。

場所は交差点になった。

20:00 3人が集まった。董志は鉄バット、信輔はポケットナイフ、優斗は木刀を持ってきた。

「一人が囮になって残り2人は隠れる。で、犯人が近づいてきたらそこを逃がさないようにして一網打尽だ」

「分かった」

「了解」

「囮なんだけど」

「僕がやるよ。武器的に1番いいし」

「…囮は1番危険だ。それでもか?」

「うん」

まっすぐな目をして信輔が答えた。

「なら任せた。頼りにしてるぜ」

「任せてよ」

信輔はあの時のように胸を叩いた。

「じゃあ作戦開始」

「「おう!」」


信輔が1人道にたっている。

その近くの壁の後ろに優斗と董志が隠れている。そしてただ何も無く時間が過ぎていく。

左腕につけている時計を見ると時計は21:33を刺している。つまり、この状態が約1時間半ほど続いている。

優斗は何も無いのに信輔に近づいてく。

「おい。どうした優斗?」

信輔の質問に何も返さず手に持っていた木刀を信輔に向かって振りかぶった。

間一髪のところで信輔が避けた。

「何すんだよ!危ねぇだろ」

「やめろ優斗!やめろ!」

後ろから董志が無理やり優斗を信輔から引き剥がした。

「ふっふっふ、はっはっハッハッハ!なんで気づかないんだよ。こいつの体は俺様が乗っ取ってんだよ!」

「お、おい。まさか…」

優斗の姿をした悪魔はニヒルな笑みを浮かべて言った。

「やっと気づいたのかよ!お前を夜襲って、女一人殺したのは俺だよ!遅すぎんだろ!ハッハッハ」

何が面白いのか分からないがとにかく笑い続ける悪魔。それに耐えきれなくなった董志がバットを握って走りだした。

「ふざけんな!」

思いっきり降ったが優斗の持っていた木刀て受け止められてしまった。

「なんだよそれ!素振りか?素振りは人に向かってするもんじゃねぇぞ!」

嘲笑うように董志に向かっていった。

「まだまだ!ウォーーっら!!!!」

また意図も簡単に防がれてしまう。

これが何度も繰り返される。

「いい加減諦めろよ。クック。一生やっても俺には…なんだ…これ…」

悪魔は優斗の脇腹を触った。そこには生暖かい液体が出てきている。

董志が悪魔と戦っている時に信輔が近く近くにきて持ってきていたポケットナイフで刺したのだ。

「ギャァァァァァァァ!なんだよこれ!止まれよ!止まれよ!ぶはぁ」

口から血を吐き出した。そしてその場に倒れ込んだ。2人が近くに寄る。

その時、かなりのスピードを出した車が3人のいるところに突っ込んだ。

車の前方には3人の血が着いている。

体の腕の関節が増え、足は象のようにパンパンに腫れがっていた。




ある日、お葬式が執り行われた。そこには芽菜と長華、そして優斗、董志、信輔。

5人の遺影と棺桶が並んでいた。

多くの参列者が訪れ、悲しんでいる。

その中にはとても健康そうな董志の妹もいた。














































































































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ガッコウノカイダン アンドレイ田中 @akiyaine

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