玄妙にして耽美的。風格ある文体で綴られて行く時代ものの怪異譚。

実に耽美的な一篇です。
善良としか言いようのないりくの側に実は魔性がひそんでいるのか、それともそこに魔性を見た亡夫の妄念や孤絶そのものこそが魔性であるのかさえ定かではない揺らぎが玄妙です。
第六章冒頭で、知らず知らずのうちに引き寄せられてきた視線をふっと引き戻す巧みな遠近法が印象的でした。
桜の好きな方には読み逃せません。

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