実に耽美的な一篇です。善良としか言いようのないりくの側に実は魔性がひそんでいるのか、それともそこに魔性を見た亡夫の妄念や孤絶そのものこそが魔性であるのかさえ定かではない揺らぎが玄妙です。第六章冒頭で、知らず知らずのうちに引き寄せられてきた視線をふっと引き戻す巧みな遠近法が印象的でした。桜の好きな方には読み逃せません。
作品の評価じゃないが、読了後に思った事は、なんと罰当たりな…。美人の奥さんを貰いながら、それはないだろう、と。作品の方は、日本昔話で山奥の一軒家に辿り着いたとなれば…の展開で、そこは期待を裏切らないんだが、ちょっと幽玄さを加味して大人の雰囲気に仕立て上げました、って言う感じです。星の数は、短編にはMax2つが信条、だからです。2021年最初のレビューでした。
語りの口調がとってもいいですね、時代物を読んでいるなあという感じがします。読み応えのある作品でした!