自由とは目的か手段か

本作の主人公は天使であり、大天使による管理されたユートピアに不満を抱き、自らの意思で道を切り拓く自由を求めようとします。それだけであれば、よくあるディストピアものなのですが、どうしても心に過ぎるのは「その世界のどこがいけないのか」という想いです。
実際、主人公の両親は惜しみない愛情を彼に捧げていました。それが模範的な行動を目指した末のものであっても、間違いなく本物であったはずです。しかし、彼は自由を求めることに固執し、旧態依然の思想に染まる両親を頑なに拒みました。
結果、彼は自由になるのですが、果たして自由とは目的でしょうか、それとも何かを得るための手段なのでしょうか。自由のために自由を得ようとすることは本当に正しいことなのか、それが全てに優先されるべきものなのかと、この作品は問い掛けているような気がします。

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