【第五回白雪賞企画:エピローグまで読み進めた上でのレビューです】
本作の魅力は、色々な解釈ができる正に「未完」で完結します。
とはいえ、その後の物語も濃厚かつ秀逸。
想像次第でどこまでも続くのでは?と思わざる得ないレベルでクオリティが凄いんです!
「人間の善とは?」「天使らしく、人間らしく生きるとは?」
思考に施行を重ねて、作者様なりに考え抜かれた熱意ある作品だと感じました。
色んな目線で感想を述べることができる凄い作品に出会えたと思います。
解釈はそれぞれあると思いますが、それぞれ見方次第で「共感」もあれば、逆に主人公に「共感できない」といういい意味で意見が分かれると思います。
現実世界の生きるとは?を、しっかり考えさせられました。
この作品を通じて、討論会なんかを開くとかなり面白そうです!
本作の主人公は天使であり、大天使による管理されたユートピアに不満を抱き、自らの意思で道を切り拓く自由を求めようとします。それだけであれば、よくあるディストピアものなのですが、どうしても心に過ぎるのは「その世界のどこがいけないのか」という想いです。
実際、主人公の両親は惜しみない愛情を彼に捧げていました。それが模範的な行動を目指した末のものであっても、間違いなく本物であったはずです。しかし、彼は自由を求めることに固執し、旧態依然の思想に染まる両親を頑なに拒みました。
結果、彼は自由になるのですが、果たして自由とは目的でしょうか、それとも何かを得るための手段なのでしょうか。自由のために自由を得ようとすることは本当に正しいことなのか、それが全てに優先されるべきものなのかと、この作品は問い掛けているような気がします。