美しい田舎の村を舞台にした、ノスタルジックで上質なホラー

ネタバレを含みます。とても上質なホラーの良作でした。
蒸し暑い真夏の日、十年ぶりに帰った田舎、記憶が無くなるほどに心を病んだ主人公、そして肌が不気味なほど真っ白な謎の少女。一話から既に興味を惹かれる魅力的な要素が詰まっており、ここで私は心を掴まれました。
バスの窓の外から見えた湖や田舎の綺麗な情景。おどろおどろしい雰囲気の欠片もないこんなのどかな美しい舞台で起きるホラー、一体どんなものなのか? とても興味深く、引き込まれます。
そして2話の木陰から主人公を見つめる少女が現れ、子供の足でたどり着けるわけのない距離になぜいるのかという説明が出てきて、3話では葬式に現れる。この時点で、この少女が主人公と、そしてマトンこと真人の死と何かしらの関係があることを思わせます。少女は二度忽然と消えるものの、まだここでは幽霊なのか人間なのかわからないような書き方も謎があり引き込み要素として効いていると思いました。
3話時点で既に物語の輪郭がぼんやり浮かび上がってきているのがいいですね。物語の枠組みがいつまで経っても見えてこない作品は飽きられやすいですが、この作品は早期に方向性が見えてきているので飽きが来ません。
4話目で出てくるアウトドア好きの野生児である真人が得意であるはずの山から転落する、何か恐ろしいものを見たような形相をしていたという死に方の説明。アウトドア好きなのに山から転げ落ちるというミスをやらかすという点に不審死との整合性があり、何か恐ろしいものを見たような顔という点と葬式に現れた忽然と消える真っ白な少女が繋がったような気がして、どんどん話の先が気になってきました。
長くなりそうなのでここでレビューは区切ります。
この作品は雰囲気で読者を引き込むタイプですね。仄暗い水の底からとか、箪笥とか、シックスセンスなど雰囲気で魅力させる系統のホラー。私、お化けがワァッと驚かしてくるホラーより、こういう綺麗で湿っぽいホラーが大好きなんです。ドンピシャでした。
田舎の情景と共に散りばめられる謎の書き方がとても巧くて、序盤からぐいぐい引き込まれました。最近は冒頭からインパクトがないと読まれないと言われていますが、この作品は引き込み方が巧みなのでスロースタートながらインパクトがあります。このような作品はクオリティの高さ的に珍しいです。
この作品は思わぬ掘り出し物でした。埋もれたままでは勿体ない!
間違いなく良作です。もっと評価されるべき!!!
長くなり過ぎてすみません。
とても好みで読んでて楽しかったので、作品をフォローさせて頂きました。これからも読まさせて頂きます。

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シラコ

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