汝隣人を憎めよ
電咲響子
汝隣人を憎めよ
△▼1△▼
「ぶっ殺すぞ」
安アパートの一室で俺はつぶやいた。
大声で叫ぶ勇気も、壁を叩く
「ぶっ殺すぞ」
俺にできることは、小さくつぶやくだけ。
△▼2△▼
隣室の住人が毎晩奏でる騒音は問題になっていた。考えてみれば当たり前の話だ。俺だけならともかく、このアパートには他にも住人がいるからだ。
「多くの住人から苦情が来てますよ。あなた、毎晩騒いでるんですって?」
「うるせえ。家賃きっちり払ってるだろ? 隣に住んでるボケと違ってな」
俺は聞き耳を立てる。どうやら隣人は大家と言い争っているらしい。
「しかしですね。あまり問題行為をされますと、管理会社と
「……ふん。ま、せいぜい大人しくしとくわ」
口論は終わった。仲間を呼んでの乱痴気騒ぎがおさまったら万々歳だ。
△▼3△▼
「ぶっ殺すぞ」
俺は家賃の
「ぶっ殺すぞ」
俺にできることは、小さくつぶやくだけ。……か?
俺が精神を病んで働けなくなったのも、毎晩うるさい隣人のせいだ。
家賃が払えない原因はすべて隣人にある。
「ぶっ殺そう」
俺はキッチンから包丁を取り出し、隣室に向かった。
△▼4△▼
『臨時ニュースをお伝えします。今朝、×県×市×町の××××ハイツにて殺人の容疑で男が逮捕されました。捜査関係者によりますと、男は意味不明な供述を繰り返しており、事情聴取は難航している模様です。男が暮らしていた部屋では四六時中ステレオの爆音が鳴り響き、住人から管理人に数多の苦情が寄せられていました。警察は男の精神面を考慮し、慎重に捜査を進めています』
汝隣人を憎めよ 電咲響子 @kyokodenzaki
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