転生者の魔法書~魔導書を読んでレベルアップって俺だけおかしくない?~

ヒラン

第1話 転生したの良いが……

何だろう……。


身体が非常に軽い。何かが俺から抜けた感じだが、生きた心地がしない。


ん?生きた心地がしない?となると俺は死んでしまったのか?いやそんな馬鹿な。俺は今は通勤中で満員電車の中で揺られているはずだ。


その程度では人間は死なない。っというより死ぬはずがない。

そう言う例は聞いたことないからな。


『あー…君』


ん?誰かに話しかけられた?


辺りを見渡す。しかし周りに誰もいない。


「誰だ?」


『あ、聞こえてたか?済まないな、君をこんなところに呼び出して』


ふむ、この感じ。神様みたいな存在かな?そうじゃなきゃこんな事できないからな。


『君をここに呼んだのは他でもない。君の転生についての話だ』


転生?あの有名な小説みたく、異世界転生みたいなものか?

となれば俺はチート並みのすごい能力を得るというのがありがちだが……。


『実は君の乗っていた電車が神雷を受けてしまってね。運悪く君が死んじゃった訳だ』


成程、確かにそれなら死んでもおかしくない。特に神様が落とした雷なら電車の中に居ようが死ぬな。


要するに手違いって事か。


「そうか……呆気ない人生だったな」


まさか人生初に神様の落とす雷で死ぬとか正直シャレにならないがな。


『驚かないんだな。「何で俺なんだ」とか言うかと思ったが……』


「いや、現実感がないと思ってな。驚けないんだ」


実際死ぬってこんな感じだと思うが、ホント呆気ないな。


『そこでだ。君を異世界で転生させようと言うんだ。興味があるだろ?』


まぁ呆気なく死んだし、即転生もありっちゃありだな。


「ああ、興味はある」


『よろしい。では君を転生させよう。場所はどの辺が良い?』


まさかの任意の地点にリスポーンさせてくれるのか。それとも創った世界が多いだけなのか。だが、異世界の戦場のど真ん中って言うよりはマシか。


「そうだな……弱い魔物ぐらいしか生息しない森で頼む」


『わかった』


良いんだ。不安のふの字すらないのかよ。

逆に不気味だな。


『それじゃあ、そこに転生させるぞ』


「頼む」


『良き第二の人生を謳歌できることを祈ってるぞ』


次第に意識が薄れていく、感覚も途絶えはじめ、俺の視界は暗くなった。







「……ん。ここは?」


気が付くと俺は森の中に居た。青い空に小鳥たちの囀り、広がる草と木々。

間違いない、俺は異世界転生したんだな。本当に。


起き上がるとウインドウみたいな画面が目前に出る。


レンジ・キリシマ

LV5

種族:人間

HP20 MP35

特技

・鑑定



なんだこりゃ?自分のステータス画面か?ならばほぼ初期レベルだな。

この世界は若干ゲームみたいなものがあるのだろうか?

少し気になるな。


俺は画面を弄り、所持アイテム画面を探す。


「…あった」


レンジ・キリシマ

アイテム

魔導書グリモワール宇宙的恐怖ネクロノミコン

魔導書グリモワール宇宙的恐怖ネクロノミコン


「……」


ね……ネクロノミコン?あの某ホラーTRPGに登場するやべぇ本か?

だとして俺は何故こんな危ないものを持ってるんだ?


「そうだ。このアイテムに鑑定をやってみよう。【鑑定】!」


能力を使ったとたん、説明画面が浮かび、文字がずらりと並ぶ。


魔導書グリモワール宇宙的恐怖ネクロノミコンシリーズ

古の賢者が読んでいた禁術の書。あらゆる上位、最上位の魔術が載せられており、この本を求めて世界中を回る冒険者が後を絶たない。

神、悪魔、魔物の召喚も記載されており、魔物を使役したり、使役した魔物の種族などの昇格方法も記載されている。通称「神の書物」。

Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと三種類が現存している。


やっぱりヤバイ本だったか。しかも三巻まであるのかよ……。


「それにしても「冒険者」というワードが出たな」


このワードが出たとなると、この世界は完全にファンタジーのようだ。

正直、安心して良いのか悪いのか複雑だな。


しかし、実際に転生してみると寂しいものだな。小説やマンガで読んだとは違い、厳しいな。


「先ずはこの世界のルールを知りたいな。この本に載ってればいいが…」


アイテム欄を中から魔導書を選択する。

選択したとたん、手元に二冊の本が出てきた。


どうやらアイテム欄にあるアイテムを選択すると、物が出し入れできるらしい。

しまい方は簡単で、横に投げ入れるだけでストレージに入る。出す時はアイテム欄から選択して取り出すと言った自由度の高いゲームの感じだ。


試しに一巻の宇宙的恐怖を読んでみる事にした。


「思ったより分厚いな。まずは斜め読みをした後に……ん」


斜め読みをした時だった。


ピロン!


何かケータイが鳴ったような音が耳元に響いた。


それ以外にも音が鳴り、俺のステータスウインドウが変化が出た。


レンジ・キリシマ

LV5→2000

種族:人間

HP20→10000 MP35→10000

特技

・完全治癒 ・魔力進化 ・万物創造 ・属性剣作成

・解呪Ⅴ ・完全蘇生 ・超戦闘能力開花 ・龍撃

・テイムⅩ

攻撃魔法

黒炎砲ブラック・フレア・カノン ・超滅の業火 

・絶対零度 ・破滅の暴風 ・溶岩砲 


ちょっと待ってくれ。めっちゃくちゃレベルが上がったぞ!?

一気にHPとMPが五桁になった。レベル2000って、どこぞのやり込みゲーの規模だよ……。


だが、魔導書を読んだだけでレベルが上がるとなると割とヌルゲー?いや、まだ分からないな。


まさか斜め読みしただけでこんなにレベルが上がるなんてな。かなりヤバイ世界だぞ、ここ。


俺は次に二巻の方も読み、魔術や特技を入手していくのだった。


ピロン、ピロン、ピロン


この音はどうやら、能力や魔法を入手した時に鳴るらしいな。

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