第4話 妹の進化

男を逃がしたか……もしもあいつが山賊だった場合、親玉に連絡しているはず。

あいつ自体が親玉ではずがないからな。


留まるとはいえ、反撃される恐れがある。

それを想定しなければ留まるのは難しい。何事も想定していなければならない。


どうする?一応結界らしい魔法はある。

本を読んだ時に取得したから問題はないが……。


ちらりとティアの方に目をやる。ぐっすりと眠っているな。こんな女の子を狙うとなれば、奴隷商売?それとも性的欲求?どれも嫌なものだが、思いつくのはこんなところか。


確か、たくさん魔法を覚えたよな。その中で人を避ける結界魔法があったな。

ウインドウを開いて確認する。


対魔対物結界 消費MP:任意

魔法と物理攻撃を防ぐ結界。消費したMP分だけ耐久度が増し、効果時間が延長される。例:MPを30消費して行使すると、耐久値が300となり、効果時間が3時間となります。


人避け結界 消費MP:任意

一定時間、術者と仲間を人から避ける結界を張る。

任意にMPを消費すれば、効果時間を延長できます。


また、上記の二つの結界は任意に解除可能です。


「これはまた……便利だな」


成程、結界系は任意にMPを消費すれば、効果時間や耐久値を増やせるのか。

時間制なら今の時刻を理解できれば十分だ。


『現在の時刻は午後、6時になります』


午後6時……もうそんな時間か。今日はこの森で野営にするか。やはり1日では街に着くことは不可能だな。

明日から街に向かおう。まずはそこからだ。


俺は結界を張り、MPを消費する。一応、午前6時まで保つようにさせてるからな。

これでしばらくは何者にも襲われることはないだろう。


「ふぅ……」


何か、今日は色々あり過ぎて疲れたな。まだ時間が早いが、寝よう。

俺は【万物創造】で寝袋を作成し、眠りにつく。




翌日、結界が解けて小鳥のさえずりが聞こえた。

それと同時に。


「にぃに、朝だよー」


可愛い女の子の声が聞こえる。しかも俺を「にぃに」と呼ばなかったか?

異変を感じ、少しだけ目を開ける。最初は視界が霞み、次第に晴れていく。

目の前には、昨日テイムした赤髪の幼女、ティアが俺を見つめていた。


「おはよ!」


「あ…ああ、おはよう」


あー……そう言えば昨日、俺はこの子をティアと名付けて、妹にしたんだっけ?

昨日ことを忘れるとか、大丈夫か俺の記憶力。


取りあえず、自分とティアのステータスを見るか。

ウインドウを二つ開き、確認する。


レンジ・キリシマ

LV8000

種族:人間 職業:テイマー、賢者、魔闘士

HP200000 MP800000

アイテム

魔導書グリモワール宇宙的恐怖ネクロノミコン

魔導書グリモワール宇宙的恐怖ネクロノミコン

・水龍剣 ・火炎剣 ・鉄の剣×2

・旅人セット


うん、相変わらずぶっ壊れた性能だな。俺は。

さてさて、気になる妹のステータスは?


ティア・キリシマ

LV2 メイン称号:レンジの妹

種族:人竜族 種族階級:ドラゴニュート→グレイトドラゴン

性別:雌 種族能力:飛翔、真竜の剛鱗トゥルードラゴヘビースケイル超重の竜爪ヘビードラゴンクロ―

状態異常:空腹(食事を与えれば解除可能)

愛情度レベル:100

HP300 MP150


「……は?」


す…ステータスがかなり強化されてるぞ!?【魔力進化】の性能すごいな。

ゲームならバランス調整が入るレベルだ。


アイテムを持たせれば、結構強くなるんじゃないか?

レベルは低いが、レベリングをすれば高くなるしな。しかしこのスペックは強い。最上位の階級に進化すると、序盤レベルでこの高ステータスは強すぎる。


某RPGなら初心者救済四天王入りだぞコレ。


「にぃに、お腹空いたー」


「あ、ああ……ちょっと待ってろ」


ステータス画面を閉じ、急遽【万物創造】を発動する。

こんがり肉じゃ飽きられるよな。

何か良いものは無いだろうか?


朝食セット 消費MP:10

名の通り朝食のセット、仲間のドラゴンですら腹が膨れる。


おお!コストの少ないものがある!これはラッキー。

だが普段はこれに頼らず、自分でも調理しなくてはな。


取りあえず二つ選択して出す。


ティアはものすごい勢いで朝食を平らげ、「ごちそうさま」と言って満足そうな顔をした。


俺も朝食を済ませ、旅支度を始める。

仲間が多ければ、頼もしいものだがその分代償もでかい。

が、それはあくまで責任感のなさが問題であることだ。


今は俺を含め二人、それに全員高スペックの性能。大抵はやられはせんだろう。

自分で言ってなんだが、この性能を信じるしかない。


後は……ティアの服装だな。

再び【万物創造】を使用し、女性用の旅人セットを用意する。


「……にぃに?」


「取りあえず、その服装じゃなくてこの装備に着替えてくれ」


ティアに用意したものを渡し、後ろを向いた。

女性の着替えシーンなどアダルト系の動画やマンガで十分だからな。


「終わったよー」


着替え終えたティアの方を向くと、それなりに似合ってる。

ロリっ子冒険者的な感じだな。



武器は無いが爪自体が武器になるだろう。

俺達は街を目指して再び歩くことにした。




あれから数時間経っただろうか?歩いても歩いても森だ。

どうすれば……あ、良い事思いついた。


「ティア」


「なぁに?」


「一回飛翔して、街がどの方向にあるか確かめてくれないか?」


俺の頼みにティアは「わかったー」と返事をする。

ティアの背中から翼が具現化し、羽ばたいたとたん風圧が俺に襲い掛かる。


「ちょっと待っててね」


そう言ってティアは飛翔し、街を探す。

見つければいいが……。


「にぃに!あったよー!ここからもう少し森を南に進めば着けるよー」


「そうか、降りてきてくれ」


ふむ、街へは近づいてはいたのか。後は金銭の問題だったな。

どこかで魔物を狩れればいいが……。


その時だった。


ガサガサ


「「!」」


近くの草むらが揺れ、殺意がそこに迫っていた。

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