『Skorpion』設定資料集!

牧 鏡八

1. X号試作戦車

 主人公たちが駆る最強無比の試作超重戦車!

 圧倒的な攻撃力と防御力、そして意外にも快足を誇る“怪物”ですが、その癖の強さもある意味、怪物級です……。



【性能諸元】

◎サイズ

車体長:10.5メートル

砲身長:9.94メートル

全長:19.44メートル

車体高:2メートル

全高:3.7メートル

全幅:4メートル

重量:150トン


◎武装

71口径14センチ砲(ツーピース型砲身。ダブル・バッフル式マズルブレーキ)

主砲同軸機関銃


◎車体装甲

正面上部:200ミリ(傾斜60度)

正面下部:200ミリ(傾斜35度)

側面:175ミリ(本体垂直装甲)+60ミリのサイドスカート(曲面追加装甲板)

背面:120ミリ(傾斜30度)

底面:100ミリ


◎砲塔装甲

正面:250ミリ(傾斜60度)

ザウコップ防盾:120ミリ(傾斜80度)

側面:200ミリ(傾斜30度)

背面:180ミリ(傾斜30度)


◎後部席装甲

正面:260ミリ(傾斜30度)

側面:200ミリ(傾斜30度)

背面:200ミリ(傾斜30度)


◎機関

スチーム・エレクトリック・ハイブリッド方式

1500馬力(定格出力)


◎速度

最高時速70キロ(整地)

最高時速40キロ(不整地)


◎乗員

1.車長 2.砲手 3.操縦手 4.通信手(兼機関手) 5.装填手



【解説】

◎概要

 『Skorpion』の主役である超重戦車。世界最強の火力と防御力を誇り、信じ難いほどの高速性能を誇る。

 その一方で、巨大な蒸気機関を主機関とする独特な設計や、前代未聞の巨体と超重量から、癖の強い一両となっている。


 オーストライヒ出身の技師マリア・フェルディナン・ピエヒ中将が、陸軍技術局戦車開発長官として完成させた最後の戦車であるが、終戦間際での完成ということもあり、戦中の出撃機会はなかった。


 外見が非常に特徴的であり、車体上には砲塔に加え、後部席が存在し、2つの出っ張りがある。また、錆防止用の漆黒の塗装が、強烈な印象を残す。車長であるアルフレッド・マンシュタイン将軍は、この見た目から、ある動物を連想していたが――。



◎火力

 敵国のどの戦車砲よりも強力であることを絶対条件に開発した結果、地球上に存在する全ての戦車砲を圧倒的に上回る性能を持つに至った。


 大口径の14センチ砲は、榴弾砲を除けば、戦車砲として史上最大であり、当然ながら砲弾の重量も破格のものとなった。なんと徹甲弾で弾頭33.5キロ、薬莢20キロと、子どもほどの重さがある。

 さらに、9.94メートルという車体並みの長さがある超長砲身により、砲口初速も異次元の域に達している。徹甲弾で驚異の秒速2500メートル! マッハ7~8である(現代MBTの120ミリ滑腔砲でも最高秒速1750メートル程度)。念のために言っておくが、レールガンではない。一般的な化学装薬である。

 有効射程も4~5キロと、第二次世界戦争末期の戦車戦で想定されていた最大の交戦距離の二倍以上あり、もはやそこまでやる必要があるのか疑問符がつくレベルだ。

 かつてない砲弾の重量と砲口初速により、圧倒的な精度と貫通力を誇り、有効射程いっぱいの装甲目標にも軽々命中させ、大穴をうがつ。


 だが、あまりに長大な戦車砲は、同時に様々な欠点を抱えている。

 砲弾重量が破格な上、装薬分離式であるにも関わらず、装填手は1名のみで、しかも装填を補助する機器類は一切設置されていない。戦争末期に間に合わせで完成させた試作戦車であったため、そうした実用上の配慮はなされておらず、機器や乗員を追加するにも砲塔のサイズ的に限界があった。専属の装填手がいる状態でも、分間2,3発撃てれば良い方であろう。

 車体並みの長さである超長砲身は、気を付けて扱わないと、すぐに障害物に引っかかってしまう恐れがある。固いものにぶつけでもしたら、照準が大きく狂う危険性もあるため、移動中や旋回時には細心の注意が必要だ。

 加えて、砲身自体の重量がすさまじく、砲塔を全周旋回させることができるのか、技術的に微妙なラインでさえあった。


 そして、最大の欠点は、後部席のある後方60度(5時から7時の方向)には、砲が向けられないことである。砲塔が全周旋回できないなど、もはや戦車と呼んでよいのか、正しくは重駆逐戦車なんじゃないかと思わないこともないが、思わないことが肝要である。(これが戦車でないと言うならあのスウェーデンの主力戦車は何なんだ)次代の重戦車として開発して、そのまま試作したのだから、戦車でいいのだ。



◎装甲

 ほぼ全周にわたって実質200ミリ以上という戦艦並みの防御力を持つ。

 特に車体正面上部、砲塔正面、ザウコップ防盾は、それぞれ400ミリ、500ミリ、690ミリ厚に相当し、もはや狂気を感じる……ではなく、敵に対し無防備に真正面をさらしても何も怖くない。

 車体側面は、175ミリの本体垂直装甲に加え、厚さ60ミリの曲面サイドスカートを備え、弱点とは言えない。サイドスカートと車体本体の装甲の間には、空間装甲が広がっており、榴弾対策もなされている。側面装甲の割に異様に用心深い理由は、水平射撃では側面が唯一、メインエンジンである蒸気機関を狙える場所だからだ。

 車体底面装甲は100ミリの厚さがあり、地雷対策となっている。


 弱点らしい弱点と言えば、車体背面(後部席背面の下)が実質140ミリ厚であり、他の戦車から比較的貫通の希望が見いだせる部分である。

 それ以外では、砲塔背面が実質210ミリ厚と次いで薄い箇所になるが、砲塔を正面に向けた状態では、その背後に後部席が城壁のようにそびえ立っているため、狙うことさえできない。

 車体正面下部については、実質250ミリ厚に相当するため、弱点とは言い切れない。


 さらには、砲身周りの防盾部や車体側面には、強固な空間装甲が施され、他の部分も純粋に分厚いため、150ミリ以上の大口径榴弾でもなければ、榴弾特融の内部への損傷を与えることも難しいだろう。徹甲弾で貫通できないからあきらめて榴弾を放り込む、というやけくそだが、地味に効く最終手段さえ、ほとんどキャンセルしている。



◎機動性

 14センチ砲と並んで、この戦車最大の特徴と言えるスチーム・エレクトリック・ハイブリッド方式のエンジンを搭載し、良好な加速性能と最高速度を誇る。

 この独特なハイブリッド方式は、巨大なレシプロ式蒸気機関(左右それぞれの履帯に一対のピストンで動力を伝える二気筒二連式機関)をメインエンジンとし、ついでに発生させた電気を車体後方の蓄電池に貯め、主となる蒸気機関のピストン運動を補助する形で、電動モーターを回すというものだ。

※この特徴的なエンジンについては、後日また詳しくお話ししたいと思います!m(-k-)/


 早い話が、一つの車体に二つエンジンを載せているようなもので、総出力で1500馬力(現代MBT並み)を発揮する。しかし、この値は定格出力であり、最大馬力ではさらに高いと考えられる。

 この怪物級の大馬力エンジンにより、150トンという超重量にも関わらず、前進・後退ともに整地では最高時速70キロ、不整地でも時速40キロという快足を持つ。ただし、そのあまりの重量から、登坂時は大きくスピードが落ちる。

 また、履帯の幅は1メートルと広く、良好な接地圧を有するが、旋回速度は巨大な車体相応に鈍重であるため、接近戦は不得意だ。


 加速性能については、これまた意外なほど素晴らしい。蒸気機関と電動モーターの特性を活かした結果である。



◎総論

 世界最強の超長砲身14センチ砲に、戦艦並みの装甲、良好な加速と最高速を持ち、走攻守全てで敵を圧倒する。

 一方で、砲塔は後部席のある後方60度には指向できず、車体・砲塔の旋回は遅く、超長砲身は車内でも車外でも扱いが難しい。装填時間も極めて長い。そのため、接近戦は避けるべきである。張り付かれて周囲をぐるぐる回られ翻弄されれば、いくら精強なこの戦車でも、弱点をさらすことになるだろう。


 戦争末期、燃料・資材が不足する中で開発試作した非常に癖の強い超重戦車だが、それを弁えたクルーが運用すれば、間違いなく世界最強の戦闘力を発揮する“怪物”となる。



【モデル】

 それぞれのパーツにモデルがあります。

 車体と足回りは、ナチス・ドイツの試作超重戦車E-100(史実では試作車体のみ完成)。砲塔は、同じくドイツのティーガー2重戦車のヘンシェル砲塔(実はケーニヒス・ティーガーの見た目が世界中の戦車の中で一番好きなんです!)。ツーピースの砲身や、ダブル・バッフル式マズルブレーキも、ティーガー2へのあこがれからきたものです。後部席はもちろん完全にオリジナルです。形はとび箱。

 スチーム・エレクトリック・ハイブリッド方式のエンジンは、ポルシェ博士が開発したポルシェ・ティーガー重戦車やマウス超重戦車のガス・エレクトリック方式から一部ヒントを得ました。



【最後に】

 とまあ、ここまでX号試作戦車について書いてまいりましたが、正直、書き足りません。特に最大の特徴である蒸気機関関係について!

 ということで、次回、スチーム・エレクトリック・ハイブリッド方式のエンジンと、足回りを深堀していきたいと思います! さらにオタクな内容になりますが、これ読み切ったあなたなら、大興奮間違いなし! ようこそ同じ穴の狢……じゃなくて、次回もお楽しみに!m(-k-)/

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