7. ガーリー軍の戦車

「プロイスがまだ戦車王国を名乗るなら、ガーリーは戦車帝国の旗を振るさ」

~フィリップ・ルクレール・ボナパルト少将


 今回は、かつて戦車先進国であったガーリー共和国が、第二次世界戦争初期にプロイス戦車にボコボコにされた後、復権を賭けて生み出した前衛的な戦車二つのご紹介です!



 ……え? 3章の展開的に、合衆国軍戦車の紹介じゃないのかって?


 ――M4シャーク中戦車のモデルはM4シャーマン戦車です。いっぱいあると強いですが、基本雑魚です。以上。



〈RM-43(パリス中戦車)〉

【性能諸元】

◎サイズ

車体長:7.38メートル

重量:36トン


◎武装

45口径105ミリ砲

車載機関銃2丁


◎車体装甲

正面:30ミリ(傾斜70度)

側面:20ミリ

背面:20ミリ(傾斜25度)


◎砲塔装甲

正面:30ミリ(傾斜70度)

側面:20ミリ(傾斜30度)

背面:20ミリ(傾斜10度)


◎機関

ストロークV型12気筒液冷ガソリンエンジン

900馬力


◎速度

最高時速57キロ(整地)


◎乗員

1.車長(兼通信手) 2.砲手 3.操縦手 4.装填手



【解説】

◎概要

 ガーリー軍が第二次世界戦争末期に投入した前衛的な快足の大型中戦車です。

 愛称のパリスは、ノルマンディー上陸作戦後、解放されたガーリー共和国の首都から名づけられ、同国市民の期待を一身に背負っていました。……もっともその首都は、マンシュタイン将軍率いるプロイス第七装甲師団に、戦争終結の前日に再び占領されてしまいましたが。



◎火力

 45口径105ミリ戦車砲を搭載。

 パリス中戦車が登場した当時の他国の中戦車は、口径75ミリ程度が基本であり、口径105ミリというサイズは、プロイス陸軍が同時期に配備を進めていたティーゲル・ドライ重戦車の70口径10.5センチ砲に匹敵する。

 火力面を見れば、中戦車としては規格外の巨砲を載せ、最新鋭の重戦車に匹敵ほどの恐るべき存在だったのだ。



◎装甲

 一方、装甲は驚くほど貧弱である。何と最も分厚い箇所で30ミリしかないのだ。

 砲塔正面と車体正面は、70度という強烈な傾斜がかかっているが、それでも実装甲厚は88ミリにしかならない。プロイス陸軍のⅣ号戦車7.5センチ長砲身型(48口径7.5センチ砲)なら1キロ、Ⅴ号パンテル中戦車の70口径7.5センチ砲なら2キロという長距離から、貫通できる実質厚だ。

 Ⅳ号もⅤ号も、パリス中戦車投入以前に前線にいたもので、これらに易々と貫通される正面装甲になぜしてしまったのかと疑問を覚える設計だ。

 が、巨砲の割に貧弱すぎる装甲には、ある狙いがあった。



◎機動性

 その狙いこそ、驚異的な機動力である。

 重たい巨砲を載せる代わりに装甲を極限まで薄くし、中戦車界最強の火力を36トンの内に収めたのだ。……36トンって重くない? という声もあろうが、戦車の中ではかなり軽量な部類である。単純な比較はできないが、同じ10.5センチ砲を搭載していたティーゲル・ドライ重戦車は90トンもあったし、パリスより小口径のパンテル中戦車にしても45トンあった。

 この身軽な車体に、当時としては最強クラスの900馬力のエンジンを搭載し、戦中最速の戦車と言われた連合王国軍のオリバー巡航戦車に次ぐ快足を手に入れたのだ。



◎総論

 装甲をかなぐり捨て、大火力と快足をとった中戦車であり、敵の真正面に立ちはだかると言うより、素早く側背に回り込んで痛打を浴びせる、といった運用に向いている戦車である。

 最後にはなるが、巨砲を載せる代償として、車体が極めて大きくなっており、何ならティーゲル・ドライ重戦車に匹敵するほどのおデブちゃんである。それでも、たとえば砲塔正面の鋭利ながら優美な絞り込みは、さすがガーリー人のデザインセンスと言える美しさがある。




Charシャール 44カロントカトル(マレンゴ重戦車)〉

【性能諸元】

◎サイズ

車体長:9.53メートル

重量:45トン


◎武装

50口径120ミリ砲

車載機関銃2丁


◎車体装甲

正面:120ミリ(傾斜60度)

側面:80ミリ

背面:80ミリ(傾斜20度)


◎砲塔装甲

正面:120ミリ(傾斜60度)

側面:80ミリ(傾斜20度)

背面:60ミリ(傾斜10度)


◎機関

ストロークV型12気筒液冷ガソリンエンジン

1100馬力


◎速度

最高時速50キロ(整地)


◎乗員

1.車長(兼通信手) 2.砲手 3.操縦手 4.装填手



【解説】

◎概要

 ガーリー軍が第二次世界戦争末期に開発していた快足重戦車です。

 当時、オロシー連邦軍の重戦車でしか採用されていなかった120ミリ級の戦車砲を搭載し、連合軍の対プロイス戦勝パレードで初登場した際、軍事関係者(

と死にもの狂いでチケットを取って観に行ったマリア・ピエヒ)を驚かせました。

 愛称のマレンゴは、イタリーの都市ですが、19世紀初頭頃のガーリーの軍人皇帝が同地における戦いに勝利して以来、ガーリーでは縁起物とされている名で、この皇帝の愛馬の名でもありました。



◎火力

 世界でも有数の120ミリ級戦車砲であり、問答無用で世界最強の一角を誇る。

 合衆国軍や連合王国軍の戦車にはまず存在しない巨砲であり、唯一肩を並べるのがオロシー連邦軍の122ミリ戦車砲であった。プロイス陸軍にしても、第二次世界戦争中、最後に実戦投入できた重戦車ティーゲル・ドライが10.5センチ砲であったのだから、大したものである。……もっとも、怪物ことスコーピオン超重戦車の14センチ砲デビューによって、影が薄くなっている感は否めない。



◎装甲

 さすがに重戦車だし、パリスみたいなことはないっしょ、と思うかもしれないが、正直にわかには首肯しかねる。

 砲塔正面と車体正面の実質装甲圧は、ともに240ミリで、オロシー連邦軍の122ミリ戦車砲の徹甲弾をも防ぎ得る精強さであるが、側面と背面の実装甲厚は突然80ミリ~60ミリ程度となる。思い切りが良すぎる……。

 なお、パリス中戦車同様、車体が非常に大きく、たとえば車体長9.53メートルはティーゲル・ドライ重戦車より2メートル以上長く、スコーピオン超重戦車の車体長10.5メートルの方が近いほどである。当然、その分弱点である車体側面が長くなっており、スコーピオンのような厳重な側面防御力がある訳でもないため、車体が大きい分、脆さが増していると言える。



◎機動性

 パリス中戦車をしのぐ1100馬力の強心臓を持ち、最高時速は50キロに達する。これはスコーピオン超重戦車を除けば、量産重戦車界でぶっちぎりの世界最速である。



◎総論

 世界有数の強力な主砲に、量産重戦車では他の追随を許さない快足を誇る重戦車である。一方、巨砲と巨大なエンジンを搭載するため車体は長大になり、正面以外の装甲が極端に薄くなっているため、真価を発揮するには意外に繊細な運用を求められる。

 また、全体に優美な気風をまとっているデザイン性は、さすがガーリーといったところだ。




【最後に】

 以上、ガーリー機甲師団の戦車二種類のご紹介でした!

 『Skorpion』では、戦車オタクの欲求とリアル感を追求するべく、基本的に登場戦車には史実上のモデルがあるのですが、正直ガーリー……(今だけ)またの名を仏、と書く国は、ぶっちゃけ戦中・戦後の戦車で、本作で活躍できるようなのが――ない!

 終戦5年前の1940年に製造が終わったソミュアS35騎兵戦車では、戦中に怪物的進化を遂げたプロイスの戦車に対しあまりに非力すぎるし、終戦直後より生産されたARL44は120ミリ砲は逞しいが、それより史上初の戦車たる英軍のマークⅠよろしく車体外周を一周する履帯が気になる。二次大戦が終わったと言うのに、お前さんはいつまで一次大戦をやってるんだね……?

 ということで、パリス中戦車にしろ、マレンゴ重戦車にしろ、本作登場戦車の中では珍しくほぼフィクションです。……一応、それぞれAMX-CDC、FCM 50tという某戦車ゲームにも登場する計画戦車をベースにしているのですが、備砲や重量、エンジン馬力などは史実上の計画と異なります。


 したがって、それらの戦車を運用するガーリー軍も、史実以上に強くなっている節がありますが、本作はあくまでフィクションなのでご愛敬。



 癖は強いものの、運用次第では破壊的な性能を発揮し得るガーリーの“戦車帝国”。

 マンシュタインに血生臭い復讐心を抱く若き名将、エロイカことフィリップ・ルクレール・ボナパルト少将指揮の下、どのようなマジックを見せるのか……今後の展開をお楽しみに!m(-k-)/

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