5. ブレナム公アーサー・ウェルズリー
設定資料集! 第五弾の今回は、初めての敵キャラ紹介です。
◎基本情報
本名:ブレナム公アーサー・ウェルズリー
Arthur Wellesley, Duke of Blenheim
異名:「
所属:ブリティック連合王国陸軍(ブリティック連合王国のモデルは、イギリスです)
◎概歴
ブリティック連合王国陸軍が誇る名将。
第二次世界戦争中は、北アフリカ戦線における活躍で知られ、同地からプロイス軍を蹴り出すことに成功している。そのため「北アフリカの英雄」の名で知られるが、同戦線におけるプロイス軍の最後の抵抗を受けた際に、最新鋭重戦車ティーゲル・アインスの8.8砲に乗機がやられる(この砲を撃ったのがシモン・ヴォル)。この際に重傷を負って、連合王国首都の軍病院へ後送された。そして、終戦を前線へ復帰することなく迎えている。
彼の祖先たるブレナム公爵家の初代も軍人であり、大陸での軍功によって時の国王から公爵位を授かった。同家はそれ以来長い歴史を紡ぐ連合王国内でも随一の名門貴族である。そんな公爵家の現当主たるアーサー・ウェルズリーは、祖先が大陸で掴んだ栄光を自身も成し遂げたいと強烈に欲し、入院中もプロイス軍の研究を欠かさなかった。特に1944年11月11日以降、黒の森作戦を発端に西部戦線の状況を一変させたアルフレッド・マンシュタイン将軍については、最も恐るべき敵と考え猛研究をしていた。
余談だが、ブリティック連合王国陸軍の重歩兵戦車ブレナムは、由緒ある彼の家名から取られている。
◎容姿
水色の瞳を持つ紳士。
特徴としては、あだ名にもなっている通り、
◎人物像
厳格な軍人であり、かつ、連合王国の由緒ある貴族で紳士たる自覚を忘れない高潔さのある人物。
また、かの国らしく、毒舌に秀でている。
◎軍人として
北アフリカ戦線では、デザート・ラッツの愛称で知られる精鋭第七機甲師団を指揮していた。そんな彼の軍人としての特徴は、「
敵を乗せて罠に誘い込み撃滅する戦術が得意なマンシュタイン将軍にとっては、陽動になかなか乗ってこないブレナム公は苦手意識のある相手であった。
◎モデル
・ウェリントン公アーサー・ウェルズリー
:大英帝国が誇る陸軍軍人で、後に首相も務めた人物です。19世紀初頭、ナポレオン戦争で軍功を重ね、1815年のワーテルローの戦いにおいて、ナポレオンを最終的に破ることに大役を果たしました。あだ名は、「鉄の公爵」や「
あの戦争の天才、ナポレオンを下したにも関わらず、自身の戦果について非常に謙虚な話し方をした人で、捕虜の扱いは丁重、味方の軍規違反には極めて厳格と、英国紳士たる自覚を持って前線にありました。作者が大好きな軍人の一人です!
前項で書いたようなブレナム公アーサー・ウェルズリー将軍の堅実な戦い方は、ウェリントン公アーサー・ウェルズリーに作者が惚れた結果であります!
・ウィストン・チャーチル
:言わずと知れた第二次世界大戦期のイギリスの首相ですが……え? どこにチャーチル要素あるの? と思われる方もいるかもしれません。
実は、ウィストン・チャーチルはある大貴族の息子として生を受けたのですが、その一族はマールバラ公爵と言います。初代は1702年、スペイン継承戦争でイングランド軍司令官として勇名をはせた初代マールバラ伯ジョン・チャーチルであり、以来数百年の歴史を誇るイギリス随一の名門貴族です。
そして、ジョン・チャーチルが、初代マールバラ公爵を下賜されたきっかけとなったのが、スペイン継承戦争における“ブレンハイム(
ともかく、第二次世界大戦時の首相たるチャーチルの実家、または生家(もとい宮殿)が、“ブレナム公”の元ネタとなっております!
※このまま終わると、「は? いやお前、第二次大戦のイギリスの将軍つったら、モントゴメリーだろ」という二次大戦オタクの声が聞こえてきそうなところです。
しかしながら、実は非常に申し上げづらいのですが、彼はほとんどモデルにしておりません……。強いてあげるなら、ブレナム公が北アフリカ戦線で活躍したというエピソードは、モントゴメリー元帥がエル・アラメインの戦いで名将ロンメルの独装甲部隊を撃砕し、連合軍の北アフリカ戦線での優勢を確立したというアフリカでの武勇伝を参考にはしています。ただ……その……作者個人的な趣向で、モントゴメリーはあんま好きじゃないんです。さすがにドイツ軍との戦力比15対1以上じゃなきゃ戦わないとか慎重すぎますし、その割にマーケットガーデン作戦は意地のように強行して大損害出しましたし、人間的にもさすがに難物すぎる印象でして、ええ……イマイチ惹かれないんですよねえ……。あ、ただ、カクテルの“モンゴメリー将軍”は大好きです! バー行くと大体頼むm(-k-)rn..オッサンスギン?
◎ブリティック連合王国軍の戦車のモデル
さて気を取り直して、ついでに作中登場した二種類の戦車について、モデルをご紹介しましょう!
●ブレナム重歩兵戦車
ブレナム公アーサー・ウェルズリー中将が乗っていた、自身の家名を冠した戦車です。
モデルは、時の首相の名に由来するチャーチル歩兵戦車……の発展版であるスーパー・チャーチルこと、ブラックプリンス歩兵戦車です(史実だけど名前が最高に厨二でかっこいい)。堅牢な防御力を持ち、ドイツ軍の最強戦車ティーガーの装甲を貫ける精強な17ポンド砲を載せた英国期待の戦車のはずでしたが――6両の試作車両が生産されたのみで、実戦投入はありませんでした。
生産が打ち切られた理由については、ここで詳細を述べると長くなるので避けますが、要約すると、歩兵戦車という設計思想が第二次大戦では時代遅れ過ぎてオワコンだったこと、また、同じ17ポンド砲を搭載した新ジャンルの戦車――つまり現代のMBT(メインバトルタンク)の先駆けとなったセンチュリオン戦車が同時期に投入されたことが挙げられます。
個人的には、生まれながらにして無骨で時代錯誤的な老人たる歩兵戦車も、新進気鋭の次代の先駆者センチュリオンも大好物なのですが、あえて、史実では時代に取り残され消えてしまったブラックプリンス歩兵戦車に、光を当てました。
●オリバー巡航戦車
作者が某戦車ゲームでも愛用しているクロムウェル巡航戦車が元ネタです。
なぜ名前をオリバーにしたかと言うと、クロムウェル巡航戦車の元ネタである人物、護国卿オリバー・クロムウェルのファーストネームから取りました。
第二次大戦における最速の戦車として有名ですが、火力・装甲があまりに貧弱で、活躍した戦いよりも撃破された戦いの方が数多く知られているという、かわいそうな側面があります。有名なものだと、ドイツの伝説の戦車兵ミヒャエル・ヴィットマンが、たった一両のティーガー戦車で、デザート・ラッツ所属のクロムウェル巡航戦車隊をフルボッコにしたヴィレル・ボカージュの戦いが知られていますね。
『
◎あの個性的な副官について
ブレナム公アーサー・ウェルズリーについてと始まった今話ですが、枝葉を豊かに、ついに副官のことまで触れてゆきます。もう少々お付き合いください。
最後に紹介するのは、この方。あまりに個性が尖りすぎているブレナム公の副官、ゴードン男爵ジャック・ステュアート中佐です。……フルネームはもしかしてこれが初出かも?
グレート・ブリティック島の北半を占めるスコットランドの人で、スコットランドでもより北方のハイランド地方の貴族です。
貴族と言っても、優雅さはなく、軍服を着ればぱつぱつになるほど大柄で、筋肉質。いかにも戦闘狂なハイランドの戦士といった野性味ある容姿です。威勢の良い話し方で、保守的な中将に度々攻撃を催促する場面が目立っていました。
そんな彼が指揮するのが、
ゴードン男爵には特定のモデルはいませんが、大隊の愛称である「フライング・スコッツマン」は元ネタがあります。
それは、イングランドのロンドンから、スコットランドの首都エディンバラを結ぶ急行列車の名前です。1862年の開業当初は、長距離列車としては首を傾げざるを得ない低品質なサービスの代わりに、とにかくスピードを最重要視して、まさに空を飛ぶように鉄路を走っておりました(それでも、ロンドンのキングス・クロス駅を10時に発ち、エディンバラまで10時間半を要しました)。
最後に完全な余談なのですが、この急行「フライング・スコッツマン」が第二次世界大戦時に残した伝説があるのでご紹介します。
そもそものお話として、実はイングランドの鉄道は、意外に思われる方も多いかもしれませんが、日本と異なり非常に時間にルーズで、定刻に電車が来ないのは当たり前です。一方、グレート・ブリテン島の北半に目を移しますと、状況は一変します。同島南部のイングランドのルーズさと打って変わって、スコットランドの鉄道は日本のように非常に厳格な定時運行が常識となっているのです。スコットランド人は、真面目で勤勉な性格とよく言われますが、まさに鉄道の運行についてもそれが見て取れます。
そんなスコットランドとの行き来に使われた急行「フライング・スコッツマン」ですが、なんと二次大戦中、ドイツ軍によるロンドン空爆の最中にあっても、毎日きっちりダイヤ通り、10時にロンドンのキングス・クロス駅を出発していたそうです! もはや執念めいた勤勉さを感じます……。
◎まとめ
初めての敵キャラ回は、連合王国軍よりブレナム公と、彼の副官ゴードン男爵、そして二両の戦車のご紹介でした!
資料集を書いていて、随分歴史ネタ詰め込んでたな……と自分でも少し驚きました。皆さんは、どれくらいネタに気付きましたか?
もちろんモデルやネタを知らなかったとしても、十分に本編を楽しんでいただけます! ぜひ今後も資料集ともども、どうぞよろしくお願いいたします!m(-k-)/
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