スーパー戦隊のリーダーを任された少年が「最終回」を目指して奔走する

主人公、赤月尚人は鐘星高校に通うごく普通の男子高校生だったのだが、ある日エクレンジャーのリーダーのエクレッドとしてスカウトされる。
しかし敵組織ニュクスは本気で世界征服を目指しているのではなく、実はヒーローものにこだわりを持つある女性の精神病を治療するために、彼女の心のわだかまりをなくすべく戦隊もののシチュエーションを演じているという状況だった。

いわゆる戦隊もののパロディですが、現実に定期的に怪人が現われてこれを個々のエピソードを消化しつつ最終回を目指すにはどうしたらいいのか。
悪役側もどういう状況であれば倒されて最終回を迎えることを納得するのかという即興劇を双方の立場で進めるちょっと不思議な展開が描かれます。

考えてみると、特撮ヒーローものは事件が起こり、怪人が現われそれをヒーローが倒すという決まりきった展開を毎週繰り返すわけで、これが自然な展開で巻き起こるのは大人の目線だとやはり不自然に思えるものです。

その一連の戦いを様式美と正義役と悪役の阿吽の呼吸で成立する一種の儀式としてコミカルな文体で描いています。ある種、実験的な小説ともいえるかもしれません。
ちょっと変わった小説を楽しみたい方にお勧めです。