アラサー女子は甘い言葉に騙されたい

蝶野ともえ

プロローグ






   プロローグ




 世の中の人たちは、どうして簡単に人を信じられるのだろうか。

 明日見吹雪(あすみ ふぶき)はそれが不思議であり疑問だった。


 人はそれぞれ心に闇を持っている。

 その闇の深さや大きさも個人差があるだろう。それもみんなが知っている事。

 それなのに、何故怖いと思わないのか。


 相手の闇を見る事。

 そして、自分の抱えてきた過去を見せる事。どちらもとても怖い。



 吹雪は、1番思い出したくない事を考えようとして頭を振った。

 あの事は忘れなければダメだ。

 友達の恋人や旦那さんのように、信じてもいい人はいるはずだ。



 そんな事はわかっているはずなのに。

 怖くて仕方がなかった。


 自分が傷つきたくない。泣きたくない。騙されたくない。

 そんな怖がりな気持ちが人一倍強いのは吹雪自身自覚している。



 だからこそ、今回は信じたいと思っていた。



 それなのに、結局はいつもと同じなのだ。


 大切だと思っていた幼馴染み。

 信じようと決意してで会った人。

 そして、初めて心から好きだと思った彼。





 吹雪は、もう誰も信じられない。

 一人で生きていきたい。

 そんな風に思い、泣くのは最後にしようと決めた。




 そう。

 傷ついて泣くのは最後になる。

 そんな未来を、吹雪はまだ知らなかった。





 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る