恋愛という枠を超えたスケールの大きな愛

何度か読み返して「この読後感と似たような気持ち、どこかで体験したことがあるんだよなぁ」と思ったんです。
登場人物が死んでるのに、当の本人たちはすごく嬉しそう。一応死を悼む人はいるものの、周りのキャラも祝福ムードで、あまつさえ読んでいる私にも悲しい気持ちは湧いてこない……。
こんな読後感、どこで味わったんだっけ……と記憶をひっくり返してみて、思い出しました。
ネタバレを防ぐためタイトルは伏せますが、映画化もした児童向けの名作ファンタジー小説を読んだ時です。
その壮大なストーリーのラスト、メインキャラが列車事故で死んでしまいます。でもキャラたちは「あの世に行って幸せに暮らせる」と前向きにとらえ、そのまま話が終わっていたはず。
キリスト教の影響を受けた作品で、宗教観からするとめちゃくちゃハッピーエンドらしいです。

キリスト教云々の話はおいておくとしても、このお話に横たわっているのは、現世に住む私では語りつくせないほど大きな愛だと思いました。
お話に出てくる潮と息吹にとっては、生死など関係なく、二人でいられることがすべて。
やっとそれが叶い、愛が溢れているラストは、読んでいて心が洗われる気がしました。
人の死を描くのに悲しみをスパイスとせず、こんな手法もあるのだと目から鱗が落ちた気分です。

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