愛と優しさに溢れた短編

幼い少女達が若くして死去してしまう内容ながら、そこに悲惨さや陰鬱さはほとんどなく、温かい優しさや光輝く愛に溢れた、素敵な短編作品だと思いました。

ただ会話シーン以外で改行が少なくちょっと読みにくいのと、文体だけでなく登場人物の台詞まで『硬い』のはどうなのかな、とも感じました。
お母さんが「この子はまだこんなに若い年だというのに……。神様、どうか潮を連れていかないでください。潮が何をしたというのですか……!!」とやや演劇っぽい口調だったり、『昔から才女で、変わった口調をする子』というわけでもない息吹が「天命」や「万物」や「この地球は試練を振り翳す入れ物」という言葉を使ったり。
その演出も作品の個性なのかもしれませんが、個人的には『台詞の雰囲気』は別に普通でも良いと思いました。

あと、息吹との再会がアッサリしすぎていたため(文字数制限の兼ね合いかもしれませんが)、思い切って何十年とか何百年も潮が息吹を探し回り、その果てに再会する――本当はいつでも再会できたのだけど――という展開の方が、更に感動できたかなとも感じました。

指摘が多くなりましたが、とはいえ根底には優しさや愛に溢れた良作だと思います。『百合』のタグに偽りのない短編でした。

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