記憶を辿り、本当の自分を辿る。失いたくないと足掻いたものの大きさを知る

著者の別作品、『南風に背中を押されて触れる』から繋がる物語です。
『南風〜』で衝撃的な事件を巻き起こした青年・西野ナツキが、記憶を失って病室で目覚める。
…ものすごく、気になる展開じゃないですか(笑)。

本作は、迷えるナツキ青年が、自分を知っているはずの様々な人物と話したり、時には霊の力を借りたりして、事件の真相を追っていく物語です。

失った記憶を辿る時。
そこに見るのは、かつての自分が失わないために足掻いた、何よりも大切だったもの。

ラストは衝撃の事実が明らかになると同時に、ある男の心象を描いた、とても印象的な光景が現れます。
事件の真相と記憶が絡み合い、これまで登場してきた人物たちの動きが、思惑が絡み合う。

一部すっきりすると同時に、まだ明かされない謎も気になって、また続きを読みたくなります。

岩田屋町物語。
なんて壮大なご近所ミステリーなんでしょう!