肩までどっぷりファンタジー! 多様性を認めた世界が目指すのは……

拝読して一番に思ったのは作者様はファンタジーを書くということに置いてずば抜けたセンスがあるということです。
ファンタジー世界を構築する美しいネーミング、目裏に浮かぶ美しい自然の光景や町の描写、そして読み終えた物語が静かに手元から羽ばたいていく余韻。特にラストの一文にまでこめられた物語世界を人々の心に伝承させていくという思いを感じ、書き手とは本来そうあるべきかなと感銘しています。
ひと月と少し、肩までどっぷりとファンタジーに浸かりこみ、作品世界を満喫させて頂きました。

歴史も内容も実に緻密で細かく施されています。細かなディティールでその深い世界を作りあげることに成功しているのですね。そのように説得力のあるストーリーも素晴らしいのですが、わたしが一番共感を覚えたのは物語の着地点です。
神と竜と人と魔の共存がテーマの本作品は勧善懲悪もののストーリーとは一味違う読後の満足感を提供してくれます。
それぞれの種族がこの世界に意思と使命を持って存在し、そのバランス関係で成り立っているのですね。その多様性を持った美しき世界を存続させていくのだという作者さまの願いを感じています。だから我々も自らと違う者を認められる優しき人でありたいなと思いながら。
壮大な大地に生けるものたちが織りなす王道ファンタジーです。
とても読み応えがある作品です、おすすめいたします!

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