異世界転生もの多すぎていい加減飽きたから現代モノを書きました。転生したい人は読まないでくれ~仮題~
ハタダ
~無給の仕事~
~無給の仕事~
ライトノベルをくたびれた大人になっても買い続けるような大人にはなりたくはなかった。しかし、気がつけば自分がそうなっていた。
職もなく、金もなく、貯金を切り崩していくだけの生活。今この瞬間書店にいる男は軽蔑していた大人そのもので、目の前を通り過ぎる学生が妬ましくて仕方がない。
学生はスマートフォンを手にしながら品定めをしていた。どうやら今の若者はネットを介してでしか、買いたいものも選べないようだ。
──殺
自分がこうでなぜ意志薄弱なこんな若者がこんな生活をできているのだ。文化レベルの違いで殺意が湧いてくる。若いだけで社会から保護された人間。許せない。
男は店を出た学生のあとをつけて行った。幸いなことに歩きだった。更に学生は
──よし、ここでやろう
バックの中に隠しておいた使い古しの出刃包丁を取り出す。狙いは背中、一撃刺突。なに簡単なことだ。たかだか学生いつも通り──
「おい、」
後ろからの声だった。
振り返ると、今追っていた学生と同じ年頃の少年がそこに立っていた。
「お前だろ?最近ここらへんで学生やってんの」
その問いで即座に理解した。こいつは自分にとって敵だと。
体裁を誤魔化すことなく一直線で男へと向かった。逃げるということは考えられなかった。顔を見られた以上猶予はないだろうし、何より不思議と逃げ切れる気がしなかった。
突き出された包丁を少年はつまらなさそうに避ける。
そうして次の瞬間、
「ぎゃっ!!」
流麗な上段蹴りが男の顔にヒットしていた。
男の体は宙で一回転。その勢いでバックの中身が散乱する。それでも包丁だけは手羽さなかった。
「うぅぅぅ」
何が起きた?蹴られた?鼻で息がしづらい……折れてるのか?わからない。俺はなぜ伏してる?こいつは一体誰なんだ。
ワカラナイ
伏してる自分を横切る少年の足を視界にとらえる。
「お前さぁいい年こいて転生ラノベを買うってのもどうなの?いや別に転生ラノベをおじさんが買うってこと自体はわるくないんだよ?けどさ、お前みたいに浮浪者丸出しの不衛生できもいおっさんが実際に買いに出て、外で読んでみてみろ。きついもんがあるだろ。そんなんだから転生もの読者は云々と馬鹿にされちまうんだ。何でもかんでも無条件に受け入れられると思うなよ。身だしなみぐらい整えろよ、作品のためだぞ」
少年が指したのはバックから飛び出た買ったばかりのライトノベルのことだった。それを理解した途端体の熱が一気に上昇した。
「うるさい!転生して一攫千金のカオリちゃんを馬鹿にするなぁ!」
立ち上がり、襲う。中座して私物を観察している少年にこちらは見えていない。
そのはずだった。
「がはっ!」
今度は後ろ回し蹴りが顔面をぶち抜く。
座っていたはずだとか背中を見せていたはずだとかそういった疑問も考える暇はなかった。意識が薄れ思考は途切れ男の脳が休眠へと入っていったからだった。
「馬鹿にしてるのはカオリちゃんじゃなくてお前自身だってのバーカ」
もはや男は少年が何を言っているのかわからない。自分の行く末もわからない。わからないことだらけだ。
なぜこうなったのだろう。途中までは普通の人生だったはずだ。普通に勉強して普通に進学をして普通に就職をした。ただちょっと人との付き合いが上手くいかなかっただけなんだ。
不明瞭な点がたくさんだ。だからせめて一つぐらい解決しておきたかった。
男はとぎれとぎれの意識の糸を必死に繋ぎ止めながら少年に尋ねた。
「あんた……だれ?」
「俺?」笑う「まぁいっか。どうせアンタともう会うことはないだろうしな」
「キョウカ。
男にはやはりその言葉は届かなかった。
異世界転生もの多すぎていい加減飽きたから現代モノを書きました。転生したい人は読まないでくれ~仮題~ ハタダ @hatada
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