雪国の冬のひとコマを描いた短編です。
主人公のひと言ひと言に、厳しい季節を日常として暮らさねばならない者の倦怠と心の疲れが滲み出ています。
空の色や水の温度、白い吐息、肌の感覚で伝えられる描写と、冷え切った重たいものに心を引きずられてしまう主人公の内面が重なります。
でもたった一つの些細な物事で、その心は何かを取り戻し、違った景色を見ることができるようになり……。
表面的には何も起こらない話。でも心の中には大きな何かが起こっている。
そんなひとの心模様を雪景色になぞらえて丁寧な筆致で切り取られたお話です。
読んだ後は知らずに口元が微笑んでいると思います。読んでよかったです。
雪国に引っ越してきた女性は、ある雪の日に、自宅で一冊の本を発見する。その本は市立図書館から借りてきたもので、今日が返却期限日だった。外は相変わらず雪が降り続き、女性は何もしたくない気分だった。しかし期限を破るまいと、女性は市立図書館に赴く。
すると司書らしき女性から、お勧めの本のコーナーに案内される。その土地の作家の本の特設コーナーだった。女性はその作家の紹介文が書かれたチラシを持ち、本を探す。しかし、今日借りても返す日がまた雪の日に当たったら、と思い、本を本棚に返す。
そして図書館を出た女性を待っていたのは、思いもよらぬ光景だった。
果たして、その地縁の作家とは?
そして女性が手に取って戻した本の題名は?
是非、御一読下さい。