詩コン 4月号


『音』2020.4.4


手をたたいてごらん


パンッ パパンッ


声をだしてごらん


アァー オワァー


うん、だいじょうぶ


君はそこにいるよ


◇ ◇ ◇

外出を控え、家に引きこもっていると、他人の気配を感じません。他人の気配を感じないと、自分の存在まで希薄になって、自分が存在しているのか疑問に感じる瞬間が、あったりなかったりします。どっち。

音を出すことができるとか、声を出すことができるとか、たったそれだけのことで自分の存在を証明することはできませんけれど、何か物理的に影響を与えうる存在があることを再認識する一つの手だてにはなるんじゃないかしら、なんて。哲学。

自分の存在を意識するためには他人の存在が必要かもしれない、という気付きを得ました。

◇ ◇ ◇


『他』2020.4.11


other か


the other か


それが問題だ


◇ ◇ ◇

ちょっとふざけました。あれのあれをもじったやつですね。へへっ。

もともとは「君にとって僕は、ただの他人なのか、顔は見たことある程度の他人なのか。どちらも他人だけど、これは大きな違いだ」という発想でして、男子高校生のもだもだ青春ラブコメが始まる予感がしておりました。

英語のテストにも繋がるんですよ。「これ the いる? いらない? えぇぇやばわっかんねー」のシーンですね。

◇ ◇ ◇


『斜』2020.4.18


こうなってても


こうすれば


まっすぐだよね


◇ ◇ ◇

斜線も、こう、ぐいっとすれば、直線になるよね、という発想ほぼそのままです。いや、斜線も直線ですね。真っすぐ、とか、垂直、という表現の方が正しいですかね。

……うん、あの、ね。難しいお題でした。はい。ここに何を書いたらいいのかわからないくらいです。わからないので、終了!!

◇ ◇ ◇


『治』2020.4.26


何事かがあっても

何事もないようにする


───────………


何事かがあったのに

何事もなかったことにする


◇ ◇ ◇

おさめる」にも「なおす」にも当てはまる書き方かと思います。

何某かが起きないように事前にあれやこれやするのではなく、何某かが起きた時にどうにかこうにかして平らかにするのよね、という、ちょっと皮肉ですね。社会風刺とまでは言いませんけれど。

私が書く詩って社会に対して文句つけるものってあるっけ……? ぱっと思い出せないだけで探せば出てくるのでしょうけど、少数派のタイプかもしれません。詩の分類とかやってみると楽しいかも、いや、たぶん楽しいよりたいへんだな……。

◇ ◇ ◇


『治』2020.4.26


其れはいつもの一寸した悪戯

其れは久方振りの一寸した試み


だったのかもしれない。


不意に現れたから手を伸ばしただけ

やっと現れたから抱擁を交わしただけ


だったのかもしれない。


けれど、俺は、生きていてほしかった。


◇ ◇ ◇

太宰治。

「治」というお題を見てまず思い浮かんだのは、「治める」でも「治す」でもなく、「太宰治」でした。今も生きていて、サイン会とかしてくれたら行ったのになぁ。全作品読みたい、全集欲しい並べたい、おいでませマイホームマイ本棚、と思う唯一の作家です。

先日、太宰追悼文集を読んでいたのですが、いやぁ、つらかった……。推しの死を何度も何度も反芻するという苦行でありました……。でも読んでよかった。

そういえばこれ入選してないのに主宰者さんからいいねもらってまして、もしかして現主宰者さんも太宰好きなのかな~と思うなどしました。

◇ ◇ ◇


『治』2020.4.26


薬で治るものかい?

酒で治るものかい?


金で治るものかい?

愛で治るものかい?


思い込みで治るものかい?

思い違いで治るものかい?


煙草で治るものかい?

喧嘩で治るものかい?


執筆で治るものかい?

言葉で治るものかい?


そもそも

治ると思っているのかい?


◇ ◇ ◇

言葉をつらつら連ねる系ですね。こちらは「治る」の読みにフォーカスをあてています。

見てわかる通り、字数をそろえたい症が出ています。例えば、思い込みと思い違いの部分ですが、最初は思い違いではなく勘違いと書いていました。でも字数のために思い違いに変更。ぴたっとはまる言葉があってよかったよかった。

お好きな方で読んでいただいて構わないのですが、私は縦組みの方がしっくりくる詩です。縦か横かで若干雰囲気違う。気がする。

◇ ◇ ◇


『古』2020.4.29


時の往にし方を見遣り


息ひとつ


星を探した彼等は


血の意味を知っていたか?


◇ ◇ ◇

「えー、古? なんかネタはないのかー」と思って広辞苑(第六版)をみていたら

「往(い)にし方(へ)」の意で、時間的に遥かに隔ったあたりをいう語

との記述がございまして、「なるほどね! それ採用だよ君!!」となった次第であります。漢字の成り立ちを知るのも楽しいですが、音の語源を遡るのも楽しい!!! 私、言語センスなくて英語もフランス語も中国語も得意じゃないけど、古語が向いているかもしれない!!!!!

『辞書とかで見つけて~』の流れになりまして、詩コン4月分の振り返りは終了です。あっちの更新してなくてごめんなさい。皆さま、お手持ちの辞書と戯れてあげてください。

◇ ◇ ◇



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