詩コン 11月号


『鮮』2020.11.7


白を亡くした世界

黒に浮かぶ鮪の血潮

血潮の色した門の向こうは

浪漫灯籠

石灯籠

灯された狐火は朱


砂利を踏みしめる彼の正体は突然変異の黒鹿

好きな食べ物は赤紫蘇


門をくぐれば絶えて静寂

弦を爪弾く音は催促

屋敷の彼方に生きた竹

桜の花は散りました

桃の花は散りました

銀杏を受ける傘は藍


紫の義眼を所望した眉目秀麗な彼の黒髪

似合うのは蓮かそれとも菊か


愚昧な羊のいない土地

代わりの贄を探して幾ばく

例え斜めでも陽がさすか

贄の錦の鯉にはわからぬ

落ちて転がる釣香炉

わかるのは折鶴様の衣擦れと


なんとまあ紅をさした折鶴様のお顔の白いこと白いこと


◇ ◇ ◇

和風ダークファンタジー始まっちゃった…。和風にしようとは思ってたけど!またなんか不穏!

和風にしたかったのは、お題発表ツイートの画像の「鮮」の文字を見て、マグロとか赤身の刺身のイメージが頭から離れなくなってしまったからです。詩の雰囲気としては鮮より艶の方が近いかもしれません。だめじゃん。

意図せずふわっと『ろまん燈籠』が入ったので、『桜桃』と『斜陽』をねじ込みました。太宰です。我ながらどんな拘りだよと思いますが、ねじ込めたので良しとします。就職したら太宰全集買うんだ。(このご時世で有難いことに内定いただきました。)

◇ ◇ ◇


『恋』2020.11.14


□星が流れて来ないから引きずり落としたい

□飛んで火に入る夏の虫の一夜に香る煙

□危篤の眼孔

■不整脈の常駐

□血反吐血反吐血反吐

□苺にフォークを刺したら果汁が飛んで手がベタついた

□声帯ごと丸齧り

□あるのかないのか子宮が疼いて脊髄反射の特異点

□白雪姫を産んだ人魚姫にも負けない

□ひとすじのひかり

□焼いたマシュマロと蕩けるチョコレートの夢

□所詮は焼いたマシュマロと蕩けるチョコレートの夢

□手折ってくれなきゃ地獄変

□その他(                 )


◇ ◇ ◇

お題が恋だと知り最初に思い浮かんだキーワードが血反吐と発情でした。折角だからそのキーワードを活かそうと、目指せエログロで書いてたんですが諦めました。そもそもそんなに読まないから抽斗が少ない少ない。多少はその雰囲気があるといいな。

思い付いたフレーズを箇条書きにしていたのをそのまま残してチェックボックス風にしてみました。言葉だけじゃない面白み。

白雪姫を産んだ人魚姫のあれこれは詩的童話で書いています。物語詩とでもいうのかな。ネタバレしていますが、ご興味ありましたら是非。https://kakuyomu.jp/works/1177354054880760115

以下別の場所で使うかもしれない没フレーズです。鎮めて高めるナイトルーティーン、ご都合主義の一目惚れ、ミント系タブレットを噛み潰した顔が浴室の鏡に映った、ラブソングの掌で躍らされてみる、呪い。

◇ ◇ ◇


『芯』2020.11.19


X軸の線の上

フリーハンドの点集合

あるいは綺麗な半真円

回して積み分け

密度はいかほど

魔法使いの指で摘まんで

首切りさながら

真横にいっせん

ズルリと引き抜くX軸

滲む果汁と滴る髄液

これぞ不埒な中心軸


◇ ◇ ◇

お題発表ツイートに書かれている詩の私的解釈は芯のある性格の方面だったんですけど、調べると中央とかが出てきたので性格云々は入れなくてもいいかなーと思いました。

実は「不埒な」のところが最初は「世界の」でした。なーんかちがーうと思い、しっくりくる言葉を探していたのですが(例:僕等、宇宙、空間、コスモ、浮世、夢想、世界、箱、筐体、母体、虚空、欠片、破片、科学、それがあなたの)バッチコーーンとはまる言葉に出会えないままに終わりました。あと、一番最後に「美味しそうだね ポッキン」っていうフレーズがありました。他の没フレーズとしては「飛び散る鉛」っていうのがあります。鉛筆感がすごかったので削りました。鉛筆だけに。私を何を言ってるの。

◇ ◇ ◇


『然』2020.11.19


右行きの時計回り:斑の雪さえ重力の虜だから布団から出られないのも道理:燃えるだけの余地がなければ呼吸も危ういなんて依存も甚だしいけれど酸素大好きマンだから致し方なし:彼の事象も公式に収まり科学を経由するの:アセチルコリン過多の不具合も天動説の余波などと言ってみたところで別に意味なんて分からない:総て私にとって是か否か:私は私よ犬歯じゃないのこれは八重歯:右心房のハスの実と左心房のケシの実が老いて朽ちるまで続くボンジュール:懐かしい鉄の匂いも天の差配:地球が青いなら血が赤くても、いい


◇ ◇ ◇

詩然としてるけど然詩じゃない。

もうちょっとどうにかしたくて悶々してでもどうにもなりそうになくて投げました。

何も調えていないわけではないんですけど、語感を優先したというのもちょっと違って、これは言葉がまろび出てくる感じでした。あれよあれよ、およよおよよ。酸素大好きマンって表現どうなのよと思うし、アセチルコリン過多云々は本当に意味が分からない。

:を使ってみましたが、そんなに突飛な記号ではないので馴染んでますね。縦組みだと縦になっちゃうので(それはそうなんですが)見づらいかもしれないです。

語学が得意だったらカタカナボンジュールに留まらず英語詩とか仏語詩とかにも挑戦したんだろうけれど、日本語で手一杯ですことよ。

◇ ◇ ◇



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