第5話 カレーパン

 優子の楽しみの一つがショッピング。とはいえ仲の良い友達のようなウインドウショッピングではない。スーパーなどで普通に買い物する、それだけなのだ。少し他人と違うのは、「珍しいもの」を探すこと。「何それ。そんなの、ショッピングと言わない」と貶されようが、「私だって新しいものないか探すわ。優子って、変って言うか、平凡ね」と諭されようが意に介さない。

 この間も、2個で数十円のカレーパンを見つけた。早速買ってお気に入りのテーブルに置き、暫く眺め、ヘヘッと笑う。これが彼女の至上の喜び。

 小食な優子は、昼をそれだけで済ますことも多い。勿体ないのでカレーパンを先ず小さな口でちょこっと囓る。

「揚げパンね」

 更に控えめな口でも「揚げパン…」。思い切って半分まで囓り顕わとなった空洞でカレーを探した。皮にほんのり薄くへばり付くペースト状が見え隠れ。ほとんどカレーの「c」の字も匂わない、具がない、味もない。騙されたと思ったが、「そういえば…」と思い直す。

「大好きなメロンパンはメロンじゃない」

「これ、一応カレー入り」

「メロンパンに文句言う人、いないわよねえ…」

「まっ、いいっか、安いんだし…きっとこれからこの形の揚げパンならカレーパン、かも」

 その新発見に喜ぶ、ひたむきで明るい優子である。

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