第6話 飾り物
光男は何年ぶりかで中学の同期会に顔を出した。ホテルのバイキング。この手の会合は苦手だが、そこそこ美味しいという評判を聞きつけていたので参加してみた。ホテルのオーナーが伸吾のオヤジで、破格の安さだったからだ。彼はクラスが違い、それほど親しいわけではない。突っ込まなかったけれど、恐らくオヤジがカネを出した。どこかのお偉いさんのようだなとふと思ったが、安ければ何でも構わない。
終盤にさしかかる。辺りの皿を見渡せば、食べ残しがかなりある。隣で何やら騒がしい。
「あのさあ、この間変な野郎に追いかけられて参ったよ。俺が捨てた煙草をわざわざ追いかけてきて渡そうとしたんだ」
「ほおー、どうかしてるね、その人」
「うん、でもちょっぴり後悔してる……」
そんな会話が聞こえる。
彼のお皿を見た。パセリが山となっていた。光男は少し気になり、「それ、食べないの?」と声をかけた。その男は……後で知ったが
「食べないよ」
食べなければ取らなければいいのにと光男は思ったが口には出さない。隣席の友人らしき人も問い詰める。徹は困った顔をしながら答える。光男は、耳をそばだてているだけで既に横を向いていた。
「だって、それ、飾りでしょ!」
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