第2話 食後の感想

 若い夫婦の会話は弾む。それもそのはず、久々の外食で、ふと目にして入った小洒落た小さなレストラン。内装も、とても趣味が良かった。

「あなた、何にする?」「そうだな、どれも美味しそうだが、これにするか」

 メニューは一つしかない。男が片手に持ち、二人で寄り添うように覗き込む。

「わたしは…」と思案していた挙げ句「う〜んと、やっぱり同じでいい」と言った彼女は嬉しそう。

 店で一番豪華なセットだったからだが、口にした二人の会話はピタリと止まった。

 やがて食事が終わる。ピカピカとまではいかないが、全てのお皿が綺麗に片付いている。

 頃合いを見ていた店主が近づいて来た。

「…お味は如何でしたか?」

 間髪を入れず男が答える。

「私たちは食べ物を粗末にしません」

 まるで見当違いの答えに戸惑いながらも店主は尚も言葉を続けた。

「それはそれは…ところで、当店自慢のビーフは如何でしたか?」

 夫婦は互いに目を見合わせながら驚きを隠せなかった。

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