第3話 逆恨み
その男に追いついた祐一は、そっと彼の肩に手を触れた。
「あのー、もしもし、すみませんが…」と言い終わらぬうちに男が怒鳴る。
「おい、てめえ、何しやがる」
男は祐一の手を掴んで捻り上げる。
祐一は青ざめた顔を歪め、もう片方の手をポケットに突っ込みながらか細い声で囁いた。
「あなたの落とした物ですが…」
「何をふざけたこと言ってやがる」
取り出した煙草の吸い殻を見せようとした祐一を、有無を言わせぬものすごい形相で睨みつけた。
「ふん、冗談じゃねえ…捨てたに決まってんじゃねえか。そんなことも分かんねえのかよ、このぼけなすがっ」
渋々引き下がる祐一の様子を見ていた周りの人の目が冷たい。
「ごめんね、お家まで持って帰ろうね」
祐一が語りかけた相手は誰もいない。その先には変色した短い吸い殻があるだけだ。冷たい目線が、好奇と哀れみと軽蔑の眼差しに変わっていくのが悲しかった。
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