#ネタ将がプロ将
6
<初めてのタイトル戦、どんな衣装で臨む?
1.スーツ
2.和服
3.甲冑
4.キグルミ
その他ある人はリプライで>
福田さんお得意のアンケートだ。とはいえ、少しはネタでない部分もあるだろう。なにせ、本当にタイトル挑戦が決まったのだから。
<@fukuhana ここは、やっぱり制服でしょう。一番刃菜子ちゃんが輝いているもの>
<@nakagojos 遠慮しておきます>
電話が鳴る。なんか、知っているな、この流れ……。しぶしぶ、出る。
「加島君も制服がいいと思うよね!」
「いやあ……どうでしょう」
「説得しといてね! 絶対にね!」
「はあ……」
中学生でのタイトル挑戦というのは、いつ以来なのだろうか。そして、タイトル戦の途中で福田さんは高校生になる。
僕はと言えば、三段リーグでまたもやチャンスが来ている。すでに二位までの目はないのだけれど、三位のチャンスがある。そうすれば次点二回で、四段昇段、プロ棋士になることができる。
お互いに、大勝負の時がやってきた。
ロコロ……次郎丸さんと対局した日の帰り道、福田さんは僕に言った。「いずれ、編入試験を受けたい」と。参加した一般棋戦で所定の成績を収めると、プロ棋士になるための編入試験を受けることができる。アマチュアでは何人かが試験を受けてプロになったけれど、女流棋士ではまだ誰もそこにたどり着いていない。
あの日の会話の続き。
「やっぱり同じ舞台の方が当たりやすいだろうし」
「まあ、それはそうですね」
「それに、私は将棋を続けることを選んだから。誰もまだしてないようなこと、いっぱいしたい」
「前向きですね」
「頑張らないと、プロ棋士にはそっちが早くなりそうだし。……なるよね?」
「もちろん、そのつもりですけど」
「そうなったら、また私が後輩ね。加島さん、って呼ばないと」
「こだわりますね」
「当たり前でしょ。まずはタイトル獲らなきゃ。応援してね」
「まあ、はい」
福田さんは、自分の思いを公表したわけではない。けれどもタイムラインでは、「#ネタ将がプロ将」というタグが流行っていた。誰かが「奨励会の入会試験にネタ将の項目があったら」とつぶやいたのがきっかけだった。
「このタグなら私、できそうです!」
「身近に参考にできる人がいるからなあ」
そう、福田さんならこのネタを本当にできるかもしれない。そしてそんな彼女とプロ棋士同士として対局する日が、いつかあるかもしれない。
「僕も考えようかな」
「えっ、兄様もネタ将に?」
「うーん、考えるだけ」
「そんなあ」
今日も、将棋はいろいろと楽しい。
『妹弟子はネタ将』 完
妹弟子はネタ将 清水らくは @shimizurakuha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
日記を書いてみたい人の日記/清水らくは
★54 エッセイ・ノンフィクション 連載中 187話
将棋のゾーン(将棋エッセイ)/清水らくは
★42 エッセイ・ノンフィクション 連載中 78話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます