英雄に打ち倒されるべき存在はどこから生まれいずるのか

村を滅ぼされ天涯孤独の身となった少女が、魔王となるまでの物語。
悲壮感と閉塞感の漂う、王道かつ直球の悲劇でした。心に深い傷を負わされた少女が、その復讐心を利用され、孤独な人類の敵へと成り果てるお話。
ある意味では英雄譚と紙一重というか、貴種流離譚をそのまま裏返したみたいなところがあって、この物語の魅力はそこにあると思います。ある種の〝危うさ〟のようなもの。ひとつひとつのエピソードに対し、つい「もしも」を願ってしまうところ。
例えばもし、彼女に力を与えたものが、もっと別の存在であったなら。あるいは家族を得てからの生活が、そのままずっと続いてくれたなら。きっと彼女の辿り着く先はもっと他にあったはず、という、そのやるせなさが胸に刺さります。
壮大なファンタジーであると同時に、孤独さや寂しさを感じさせてくれる物語でした。

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