アイリーン・F・ウッド

藤原埼玉

第一章

Prologue

 混沌から生まれた国家に属することのない暴力。


 不条理が跋扈する世にアイリーンは産み落とされた、何の変哲もない村娘として。


 当代、国同士の対立は深まり国は荒れていた。


 国が荒れると何処からか魔物は増える。


 故に愛する者の死などは珍しいものではなかった。


 しかし、珍しくないからといって人がそれに耐え得るかと言えば、そうではない。


 理性を保つことが能わず発狂するもの。


 失意の中、それでも生き続けようとするもの。


 アイリーンはそのいずれでもなかった。



 これは少女が魔王と呼ばれるまでの物語。

  

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