「緋い恋文」からは毒にも通じる夾竹桃の甘い薫りが届いてきます。

この作品を尋ねるのは二度目となります。
冒頭からゆっくりと読み返していた。
 
重いテーマながら、感情の抑揚をおさえたしっとりする文章が綴られてゆく。
最後まで読めば読むほど、まるで、美しくもあり儚い映画のシーンにも思えてしまうのは僕だけだろうか……。

「夾竹桃(キョウチクトウ)」この花に思いあたる方は大勢いらっしやるかと存じます。けれど、コルチカムの花言葉が添えられた「緋い恋文」からは切なくも仄かな甘い薫りすら届いてくる。

けっして、実父親の「不倫」などという単純な言葉では語れない、深い情感溢れる作品だと思います。
生みの母親と育ての母親、娘の揺れ動く気持ちに涙すら感じてしまう。是非ともゆっくりとご覧ください。