おまけ・異世界神話
世界の始めに、二柱の女神が存在した。生の女神メシエ・トリドゥーヴァと、死の女神ギーヴェリである。
二柱の女神は瓜二つの容姿であったが、ただひとつ瞳の色だけが異なっていた。メシエ・トリドゥーヴァは深い青色、ギーヴェリは深い緑色の目を持っていた。
彼女らは永い永い時を互いに支え合い暮らしていたが、あるとき生の女神メシエ・トリドゥーヴァは二人きりの世界を寂しいと感じ、寂しさを紛らわせるため生命を創り出した。
生の女神が流した涙は深い海となり、星はたちまち生命で溢れかえった。
生み出された生命の中でも、最も女神に近い姿と知性を持つものがヒトとミトラだった。両者は手を取り合い星に
死の女神ギーヴェリは、これを見て激怒した。生命の存在しない静寂こそが、彼女の求める安寧だったためである。ギーヴェリは生命たちを殺し尽くしてしまおうと考えた。彼女は世界に老いと死の呪いを振り撒き、永遠を謳歌していた生命たちは時と共に老い、死ぬようになった。星は再び死で満たされた。
メシエ・トリドゥーヴァはこれを是とせず、ギーヴェリが千の命を滅ぼせば、千五百の命を生んだ。そうして生命は、生と死を繰り返すようになった。
あるとき、死の女神ギーヴェリはヒトとミトラの元を訪れ、こう囁いた。
「私に忠誠を誓い私のために戦うのならば、お前たちから死の呪いを祓ってやろう」
ヒトはその誘いを跳ね除けたが、ミトラは甘言に惑わされた。死のない永遠の生を手に入れんとしたミトラたちは、生の女神メシエ・トリドゥーヴァに反旗を翻した。
生と死の抗争、創世戦争は千年続いた。ヒトは自分たちを生んだ母なる女神を決して裏切らず、女神に与えられたイマジアという神秘の力を駆使し、勇敢に戦った。
やがて戦いが終わる時が来た。敗れた死の女神は冷たい海深く封印され、ミトラは裏切りの罰として、女神に似た姿と知性を奪われた。
そうしてミトラは肉体の定まらない惨めな生命と成り果て、ヒトは今なお女神の慈愛を受け地に満ちている。
異世界年越譚 深見萩緒 @miscanthus_nogi
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