何が魔法って作者の手腕が魔法。

 一万字でここまで骨太なファンタジー書いてエピソードをしっかり終わりまで書ききってるのが一番の魔法ですよ。
 最初はですね、イマジナリーフレンドの話かなと思ったんですよ。でもそうではない。一話目「夢の犬」から言葉を引用するなら「(前略)私は見たことないし、優しい家族もいなかった。だから、私がマッチを擦っても何も見えない(後略)」なんですよ。つまり、そう、この理屈で行くなら、主人公が見ているこの犬は現実なんですよ。ちょうどそれに読者が気づくだろうタイミングと、ファンタジー要素がドッと襲い掛かってくるタイミングが狙いすましたように一致しているのが心地いいんですね。
 そして圧巻の描写となるのが五話目「糸の声」後半。文章が上手い。死ぬほど格好いい。ここがめちゃくちゃ上手いので、何もかもに説得力が出るんですよ。この超常の力のあり方を完全に納得させられるので、それに連なる世界観まで含めて全部納得がくる。ファンタジーとして完成する。
 総じて力量が高いです。強い。