おばちゃんによって押された【最終破壊兵器】。
それを止める緊急停止スイッチを押すまでの猶予は、なんとたったの【60秒】!!!
本作は、その60秒間の間の群像劇になります(一部、過去の話などもありますが)。
その間にいろんなことが起こります。本当に、いろんなことが……(笑)
たとえば走馬灯とか、時間感覚が異常に引き伸ばされる概念が存在しますが、これは最終兵器を押されたことによって発生した【世界の走馬灯】なのかもしれません。
ノンストップコメディでありながら、登場人物の考え方や造形にリアリティがある本作。でもやっぱりなんでもアリの本作。
そのえもいわれぬの感覚を成立させている要因のひとつでは、間違いなくこの時間感覚にあると思います。
リアリティを出して【60分】にしたらこの味は損なわれる。【60秒】だからこそいい。そっちの方が面白いと思う。
だが、自分がこのような話を思い付いたとして、制限時間を思い切って60秒にできるか、そもそも60秒の方が面白いということに至れるかどうか……と言われれば、正直自信がない。
すごいものを読んでしまった!
もし最終破壊兵器なんて物騒な代物の起動ボタンを、うっかり掃除のおばちゃんが押してしまったら…?
そんなとんでもないIFを、どこまでも人間臭く描き切っているのがこの作品です。
まず「ノンストップアクションギャグ」というタグに偽りは一切ありません。ボタンを押してから兵器の起動までたったの60秒! 社員達は頭と体をフル稼働させ、とんでもない仕掛けの数々に休むことなく挑んでいきます。詳細に作り込まれたビルの設計にも脱帽ですが、その突破方法もアイディアが練られており、アクションサスペンスという面だけ見ても十分楽しめます。
ただもう一つ特筆したいのは「どこまでも人間臭い」登場人物の方々。トップと部下の間で板挟みの中間管理職、目を疑う行動に突っ走ってしまう役員、パニックになる人々に巻き込まれる人々、そんな事態はつゆも知らない関係者、そしておばちゃん…
極限状態で出てくる愚痴や本音と、そうじゃなくても出てくる何気ない会話からは様々な生き方や価値観が垣間見え、それはさながら社会の縮図の様。この世界が多くの人の人生で成り立っているという事が、世界滅亡の危機と共に描かれているのはある種の皮肉かもしれません。
世界の危機を招いたのがおばちゃんなら、その危機を救うのもおばちゃん!?
ただのドタバタなコメディで終わらない、アクションも人間ドラマも詰まった素敵な一作です。
どこかのページで必ず、笑いの発作が発動する。それは、間違いありません。
タイトルを見ると、おばちゃんが中心になって活躍する物語なのかなあ?…などと思いながら読み進めていくと…これは「オオテマチビル」に関わる人々の、壮大な群像劇なのだ、という事がわかります。
それぞれが、それぞれの思惑によって、本能の思うがままに動き、喋り、考え、身を守り、時々エッチな妄想をしたりしながら、…あと何秒かで日本を破壊しようとする起動システムを、何とか停止しようと頑張ります!!
読者はいつの間にか、色んな登場人物に共感したり入れ込んだりしながらついつい、頑張れー!!…と、応援したくなってしまいます。
※私は、14階のOLさんが1番好きです。
この感動と沸き起こる笑いを、どなたかにお伝えしたくて、たまらなくなりました。
また何度もこのビルに、遊びに来させていただきますね!!
この出会いに、心から感謝致します!!!
とある丸の内のとあるビルのとあるフロアにて、掃除のおばちゃんがついつい押してしまったのは、最終破壊兵器の軌道ボタン。
慌てふためく社員たち。
役員たち不在の中、責任の所在が不明確なまま、組織の末端たちは最終破壊装置の軌道停止に向けて右往左往する。
たいへん笑わせて頂きました!
同時に、日本社会(いや会社?)の縮図も存分に見せて頂いた思いです。結局、クライシスを押しとどめているのは末端の現場社員なのですよね。
あるいは、掃除のおばちゃんだったり。
ボタンの掛け違いから始まるドタバタ・コメディ。これは働くすべての人のための賛歌です。
星新一並みのシュールさと面白さに脱帽した。
いちいち面白いのだ。
そしていちいちドキドキさせられるのだ。
普通の場所に置いてある最終兵器ボタン。
もうそれだけでシュールなのだが、これを止めるのには60秒以内にストップボタンを押さなければならない。
時間がない中、必死に動く会社職員達。
その合間の普通に働く掃除のおばちゃん達。
彼女達は現状を知らない。
このバランスがとても面白いのだ。
最先端テクノロジーを超えたオーバーテクノロジーの不安と悲哀と妙な安心感。
設置する側の思惑と使う側の思惑。
団体のトップ連の浅はかさ。
テンポもよく、どんどん読み進められる。
いや本当に面白くて何度も笑った。