綺麗事のはびこる世のなかに一石を投じうる出色の青春小説
- ★★ Very Good!!
世界で一番やさしいリッキーこと、小学六年生の榎本力也らの身に起こったできごとを描いた青春小説である。彼は「露悪的」という形容がぴったりの一風変わった言動の持ち主なのだが、作品を読みすすむにつれて次第にその行動原理が明らかになっていく。とりわけ人間心理の機微がていねいにすくい取られており、それが作品にリアリティを与えていると感じた。この世界といかに折り合いをつけるかを考えるよい教材になりそうである。
やさしさとは何なのか。やさしいとはどういうことなのか。世界で一番やさしい人物の生き様をその目でしかと照覧あれ。