別れが交差し、恋人は再び雨を降らせる。それは思い出の桜か、始まりの雫か


 彼女は往った。些細な陰謀により、些細な油断が、彼との最後だった。
 彼は逝った。些細な偶然による、募っていた昏い想いが、彼女との最後を教えた。

 そして再び、2人は出会った。彼は王子と成り、彼女は聖女と為った。
 後悔と疑惑と恋心が入り乱れ、奇跡の元に雨が降り注ぐ。

 
 タイトルからは想像も付かない程に作りこまれた世界観と、感情の忌諱が細かく描かれていて、この物語に登場するキャラクターがそれぞれ「生きている」と感じさせてくれます。
 そして、暗い感情や苦しい展開を交えながら少しずつ彼は成長し、2人の距離も少しずつ近付いていく。無駄な葛藤を抱え、悩み、そして思いをぶつけあう……彼やその仲間がとても現実感や人間性を携えていて、どうしてもその思い一つ一つに私たち読者は感情を動かされ、この世界に魅せられていくのです。

 丁寧な時間軸と、丁度よいテンポで物語が進み、読んでいて飽きをまったく感じさせない所もすごいです。
 
 もし僅かにでも興味が出たら、まず読んでみることをおすすめします。あなたもきっと、虜になるでしょう。

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