GPAとアドバイザー

GPAは学修指導に用いられる。

学修指導に用いられないGPAなどただの数字だ。GPAを用いない学習指導などしないほうがましだ(明確に制度化されていない学修指導は、単なる精神論やアカハラになりがちなので、やらないほうがよい。やるからには、教職員個人の指導能力などという不確定要素に頼らず、可能な限り制度化した上で実施すべきだ、ということを私は言いたい)。GPAは学習指導の不可分な要素なのである。そしてGPAと学習指導はアドバイザーがいなくては機能しない。


学生に直接指導するのは Academic Adviser という職種の人である。

では Academic Adviser とはどんな人か?

日本で言う、教員や、教務課員のことだろうか。


日本におけるGPAの最大問題は、アドバイザーという職種の人が大学に雇われてないことだ、と言わざるを得ない。日本では教職員が学生の教育だけでなく、生活指導や人生相談に乗ったりする。誰もそれを不思議に思わない。職域、職掌が明確でない。アドバイスに専門性が要求されていないから、の教職員がアドバイスをすることになる。GPAとは何かということを突き詰めて考えれば、アドバイザーという専門職を雇って、教育研究職と切り分けて、それなりのリソースを学修指導に割り当てることなのである。

これまで、日本の大学にはアドバイザーも学修支援センターもなかった。そういう概念がなかったからだ。GPAという概念もなかった。これまでは教職員の個人的資質でそういうものが処理されてきたからだ(教員はしばしば学生に送る言葉などを求められる。しかし人生における教訓を与える資格を誰が教員に与えたのだろう。教員は僧侶や司祭ではない。心理カウンセラーでもないし、ソーシャルワーカーでもない。企業でもしばしば上司は部下の教育係となるが、彼らが教育という概念を理解しているかどうか、非常に疑わしい、と私は常々思っている。いや、私は教育論や教育学を語りたいのではない。教育と教育以外のものを明確に区別しているか、教員の権限が及ぶ範囲を認識しているか、教育というものに過度の期待を抱いていないか、ということを言いたい。教育における越権行為がアカハラに他ならない。大学では人の生き死にに関わることは少ないが、病院における医師や医療スタッフの分業体制をみれば、同じようなことが大学にも必要であることは想像し得るだろう)。


アメリカでAcademic Adviserは公募されている。大学院生が雇われることもあるが、少なくともたてまえは公募で、おそらくは、その大学の大学院を修了して、その大学のカリキュラムをある程度熟知した、ソーシャルワーカーなどの仕事をしているOBが雇われるのであろう。プレゼン能力があり、協調性がある人。大学出たてではなく実務経験があるほうが望ましい。必ずしも教員ではない。部外者にはぱっと見教員のようにみえるかもしれないが、おそらく違う(小さな大学だと professor を兼ねていることもあるかもしれないが、ふつうはいても instructor とか faculty staff、つまり助手などだろう。アメリカの大学には助手が多いと聞く。日本でも助手は一応教員だ。そして学生からみれば、助手もTAもSAも大して見分けはつかない。全員、なのだ)。


アメリカの大学は、少なくとも初年次は全寮制のところが多い。

そのため、アドバイザーオフィスも寮にあることが多く、また寮長(Resident Dean)がいて生活全般のアドバイスもしてくれる。その他に学生スタッフ(Proctor, Peer Advising Fellow)などがいる。

アメリカの大学生はここまで手厚く面倒を見られているのだ。

アメリカの大学の初年次の学費は日本とは比べものにならないくらい高い。だからその金でこれだけの手助けができるのである。


日本の大学には「学修支援センター」というものが設けてあることが多い(特に女子大に多いらしい)。検定試験を受けさせたり、補講を受けさせたりするが、これはアメリカのアドバイザオフィスとは似て非なるものだ。当たり前だが、アドバイザーオフィスはアドバイザが常駐しているオフィスである。アドバイザは学生に対して、主に、GPAと直結する指導を行う。あなたは今学期この科目を Withdraw したり Imcomplete にしたほうが GPAを上げられますよ、というような具体的な指導をするのである。GPAが足りない学生にはWorkshopを受けさせる。


日本も学費を年500万円くらいにすればすぐにGPAも学修指導態勢も導入できる。

そのためには奨学金制度を充実させ、GPAに照らして成績不良学生の奨学金を容赦なく停止し、ほぼ強制的に自主退学させるような制度を導入するしかない。


改革支援事業で補助金を出しても、真面目にやろうとすればその補助金以上の予算が必要だ。そんな改革が日本でできるだろうか。

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アメリカのGPA 田中紀峰 @tanaka0903

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