ランチェスターの法則

「お助けください転生・転移者様!魔王軍が攻め込んできました!現在、王国も兵を集めて応戦の準備をしていますが、被害がどれほどになるか……」


「ふむ……自分がちゃちゃっといってチートスキルで解決すれば被害は0なのでは?」


 まったまった。それでは現代知識の活躍の場がなくなってしまう。企画倒れになってしまうから大人しくしておいてほしい。


 今回用いるのはランチェスターの法則と呼ばれるものである。ランチェスター氏というイギリスのエンジニアが戦闘の資料を統計的に分析して発見したものだ。

 アメリカはこの法則を中部太平洋の対日戦線で用いて多大な成果を収めた。


 ランチェスターの法則には一次法則と二次法則の二つがある。


 一次法則は一騎打ちの法則と呼ばれるものである。二者間の戦いにおいて武器の性能が同じであれば兵力が大きいほうが勝つ、というものだ。要は数を揃えたほうの勝ちという単純な結論である。


 二次法則は確率先頭の法則、あるいは集中効果の法則と呼ばれるものである。

 軍艦からの射撃や空爆など、持っている武器の性能が同じである集団同士の戦いにおいては、被害は戦力の二乗比の差になるというものだ。つまりお互いに離れたところから複数の相手を攻撃したりされたりする場合に成り立つ法則である。

 異世界ならおそらく魔法の撃ち合いなどに適用されるだろう。


 ランチェスターの法則は戦う相手の力を読んで勝算を検討することの重要さを示している。


「ふむ……ところで魔王軍と王国軍の戦力差は?」

「魔王軍10万、王国軍7万です!」


 どうやらすでに人数差で劣勢らしい。こんなときランチェスターの法則をどう使えばいいだろうか。二次法則を見てみよう。


 二次法則では二乗の差の平方根で残存兵力を規定するので一次法則よりも戦力が大きいほうが有利となる。

 例えば一次法則だと10-7=3で残存兵力は相手が3残る計算だ。

 ところが二次法則だと10^2-7^2≒7.14^2 で約7残る。なんと一次法則よりも2倍以上の残存兵力を相手に残してしまうのだ。

 つまり数で負けている王国軍は魔法の撃ち合いは避けた方がよいということである。


「ふむ……二次法則を鑑みて魔法の撃ち合いは避けたほうがいいな。狭い路地に誘い込んで各個撃破を狙うか。」


 このようにどのような戦術を取ればいいか、計画を立てることができるのだ。


 知っててよかった現代知識。


 参考文献 知っておきたい法則の辞典










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