ベンフォードの法則

「お助けください!転生・転移者様!悪徳宰相が不正会計をおこなっているようなのです!」


 君はこんな状況に陥ったらどうする?チートスキル『悪事自白』を使う前に現代知識に頼ってみよう。


 不正を見つけるのは簡単だ。帳簿の中から改竄が行われた資料を見つけ出して実態と照らし合わせればいい。……どうやって?

 宰相は会計の辻褄は合うように改竄しているようだ。計算ミスから見つけるのは難しいだろう。


 こんな時はベンフォードの法則を使ってみよう。


 *


「ふむ……それぞれの数字の先頭の数の分布を調べてみたらどうだろう。」


 実は先頭の数字の割合というのは一様ではない。1が先頭の数字の数は全体の30.1%あり、2が先頭の数字の数は全体の17.6%だ。そして数が大きくなるほど割合は下がっていく。9が先頭の数字の数は全体の4.6%ほどしかない。


 これを用いて調べていくと……ビンゴだ。とある資料で先頭の数字の分布がどの数も同じようなものだった。人為的な操作を行うとベンフォードの法則からはずれてしまうのである。


 聖剣でもって宰相を断罪するまえにどうしてベンフォードの法則が成り立つのか周りの人にも教えなければならない。どういったロジックで分かったのか教えて宰相の心をへし折ってあげよう。


 ベンフォードの法則の説明には対数を用いる。説明がスムーズにいくように対数がわかる知識人を登場させておくといいだろう。


 ちょっとlog2の値を出してみよう。log2=0.301である。ん?どこかで見たことのある数字だ。次にlog3=0.477 これは見たことがない。だがlog2との差をとってやると、0.477-0.301=0.176 そう、2が先頭の数字の数の割合と一緒だ。


 つまり先頭の数字が表れる確率は対数に基づいているのだ。

 これで宰相を完全論破、後腐れなく宰相を断罪できる。


 知っててよかった現代知識。



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