カチッサー効果
「お助けください転生・転移者様!クエストをさっさと受注したいのですが、受付に長蛇の列ができているのです!」
「ふむ……チートスキルに頼らず、そこはちゃんと並んだらどうだ?」
ごもっともなご意見、しかしここで終わっては企画倒れになってしまうので一応現代知識に頼ってみよう。
心理学者のエレン・ランガーはこのような実験を行った。被験者をコピー機に並ぶ列の先頭に行かせ、3通りの言い方で頼ませたのだ。
1つ目、要求だけを伝える。
「すみません。5枚なのですが先にコピーを取らせていただけませんか?」
2つ目、本当の理由を付け足す。
「すみません。5枚なのですが、急いでいるので先にコピーを取らせていただけませんか?」
3つ目、もっともらしい理由を付け足す。
「すみません。5枚なのですが、コピーを取らなければいけないので先にコピーを取らせていただけませんか?」
このとき、1つ目の頼み方では承諾率は60%であったのに対し、2つ目の本当の理由を付けた場合では、なんと承諾率は94%であったのだ。しかし、ここで注目したいのは、3つ目のもっともらしい理由であった場合も93%の承諾率を持っていたことである。人に頼み事をする時に、何かしらの理由をつけることで承諾をしてくれる確率が上がる。これがカチッサー効果である。
「ありがとうございます!早速割り込ませてもらうよう、お願いしてきます!」
知っててよかった現代知識。
……ん?何やら受付の方が騒がしい。
「なんだよ!先にクエストを受けたいから先にクエストを受けさせてくださいって!」
「循環論法じゃねーか!こっちは大事なクエストを受注してる最中なんだよ!後ろにならべ!」
実は上記の確率は、コピーの枚数が5枚のときの話である。コピーの枚数が20枚のとき、1つ目の承諾率は24%、2つ目は42%、3つ目は24%に下がってしまう。
カチッサー効果が通用するのは、二つ返事で受け入れてくれるような些細な頼み事だけだということだ。
参考文献 Newton 2021年 2月号
異世界で役立ちそうな現代知識についての解説 ヒトデマン @Gazermen
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